飲酒運転で逆走、死亡事故を起こした19歳少年に懲役9年求刑　「罪深さを忘れません」と涙の最終陳述

2024年9月に埼玉県川口市で発生した飲酒運転による死亡事故で、危険運転致死などの罪に問われた中国籍の少年（19歳）の論告求刑公判が9月5日、さいたま地裁で行われました。検察側は懲役9年を求刑し、弁護側は少年院送致を求めました。

事故の概要：一方通行の道を逆走し、男性を死亡

少年は2024年9月、飲酒後に車を運転し、一方通行の道を逆走。右から左へ横断していた男性を死亡させてしまいました。現場はJR西川口駅から約900メートルの住宅街で、事故の衝撃は今も近隣住民の記憶に深く刻まれています。

検察側の主張：極めて身勝手で酌むべき事情はない

検察側は、少年の行為を「極めて身勝手で自己中心的であり、酌むべき事情はない」と厳しく批判しました。危険運転致死の罪を問うべきだと主張し、懲役9年という重い刑を求めています。

弁護側の主張：危険運転致死の成立を否定し、少年院送致を主張

一方、弁護側は危険運転致死の成立を否定し、少年が更生の可能性を秘めているとして、家庭裁判所への再送致と少年院送致の保護処分を求めました。

少年の最終陳述：「罪深さを忘れません」

最終陳述で、少年は裁判官をまっすぐ見つめ、力強い口調で語りました。「私は、今後の人生において、決して今回自分が起こしてしまったこと、自分が命を奪ってしまったという罪深さを忘れません」。

さらに、社会復帰への決意を表明し、「当たり前のことを守り、社会の常識を守り、立派な大人になるよう、周囲の人に相談したり支援を受けたりして、成長していきます」と述べました。

被害者遺族の悲痛な叫び：「顔も見たくない」

9月2日の初公判では、被害者の妻の供述調書が朗読されました。妻は少年に対し、強い怒りを露わにし、「ネット上で映像を見て、事故の状況を知りました。相手の親からは謝罪したいという連絡がありましたが、はっきり言って顔も見たくないです。まったく知らない場所で生活してほしいです」と悲痛な叫びを上げました。また、少年の車に同乗していた友人らについても「同乗していた人たちも、同じ罪だと思っています」と語りました。

事故現場の住民の声：「今まであんな大きな音は聞いたことがありません」

事故現場近くの住民は、「朝6時前、ものすごい音がしました。今まであんな大きな音は聞いたことがありませんでした」と衝撃を語ります。現場には、少年の車がアパートの垣根に突っ込み、ゴルフバッグが家の玄関前まで飛散していたそうです。平穏だった住宅街は、一瞬にして惨劇の現場と化しました。

この事件は、飲酒運転の危険性と、命の尊さを改めて私たちに突きつけています。再発防止のためにも、厳罰と交通安全教育の徹底が求められます。