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音楽とワインで迎える十五夜 指揮者・野津如弘が語る、月の調べと美酒のハーモニー

投稿日:2025年12月10日

今年もまた、美しい十五夜がやってきます。音楽とワインを片手に、月を愛でる贅沢なひとときを過ごしませんか?指揮者・野津如弘さんの連載【音楽と美酒のつれづれノート】では、クラシック音楽とワインの魅力を独自の視点で綴っています。今回のテーマは、古来より人々の心を捉えてきた「月」です。

月と狂気のルーツ、そしてシェーンベルクの幻想的な世界

先日、日本でも3年ぶりに皆既月食が観測されました。赤銅色に輝く月の神秘的な姿は、まるで別世界に迷い込んだかのようでした。実は、西洋では「月(luna)」を語源とする「lunacy」という言葉が「狂気」を意味することをご存知でしょうか?月の満ち欠けが人の精神に影響を与えると考えられていたことから生まれた言葉です。

今回ご紹介する楽曲の一つ、『月に憑かれたピエロ』(1912年)は、そんな月の神秘的なイメージと狂気を表現した作品です。アルノルト・シェーンベルク(1874-1951)が、アルベール・ジローの詩をハルトレーベンが独訳したものに基づいて作曲したメロドラマで、歌とも朗読ともつかない独特な語り方「シュプレヒシュティンメ」と5人の演奏者による幻想的な音楽が特徴です。

ピエロが見る月の幻想的な物語

この作品は、月が注ぐワインに酔いしれた詩人が、月を様々なものに見立てて歌う物語です。コロンビーナ(イタリアの仮面劇コメディア・デッラルテに登場する女中)や聖母、そして死の病に冒された月…。ピエロの目を通して見える月の姿は、時に妖しく、時に幻想的です。

物語は、ピエロが王墓でルビーを盗んだり、赤ミサ(詩人の空想によるもの)で司祭に扮したりと、奇妙な出来事が次々と起こります。故郷のベルガモを懐かしむピエロの姿や、月の光が舟の舵となって帰還する場面など、幻想的な世界観に引き込まれること間違いなしです。

コメディア・デッラルテ発祥の地、ベルガモ

ピエロの故郷とされるベルガモは、北イタリアの都市で、コメディア・デッラルテ発祥の地としても知られています。道化やピエロの起源とも言われるアルレッキーノやプルチネッラ、ペドロリーノらが登場するこの即興喜劇は、後の数々の芸術作品にも大きな影響を与えました。

秋の夜長、シェーンベルクの《月に憑かれたピエロ》を聴きながら、グラスを傾け、月の光に包まれる贅沢な時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。

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