「約束、守れなくてごめんね…」鳥取連続不審死事件・上田美由紀元死刑囚への弁護士の深い思い
2023年1月14日、鳥取連続不審死事件で死刑判決を受けていた上田美由紀元死刑囚が、広島拘置所で窒息死を遂げました。49歳という若さでの突然の死に、弁護士たちは深い悲しみに暮れています。本記事では、上田元死刑囚の弁護を担当した高橋俊彦弁護士の言葉を通して、事件の背景と、死刑囚を弁護する弁護士の苦悩と使命に迫ります。
再審請求の準備中に…突然の訃報
上田元死刑囚は、男性2人に対する強盗殺人の罪などで起訴され、最高裁で死刑判決が確定していました。しかし、高橋弁護士は上告棄却後も諦めず、再審請求の準備を進めていました。その矢先に舞い込んできた上田元死刑囚の訃報に、高橋弁護士は「驚きしかなかった」と語ります。
上田元死刑囚は、夕食中にむせて倒れ、拘置所の職員が対応しましたが、搬送先の病院で死亡が確認されました。高橋弁護士は、もう一人の弁護士と共に急いで拘置所へ向かい、上田元死刑囚の子どもたちと対面しました。シングルマザーだった上田元死刑囚に代わり、高橋弁護士は子どもたちの生活支援や精神的なケアも担ってきました。子どもたちは、母の死に冷静に対応しようとしていたと言います。
“最後の言葉”に込められた願い
上田元死刑囚は、亡くなる前日に高橋弁護士に手紙を書いていました。その手紙には、娘の高校の卒業式への出席を依頼する内容が記されていました。「卒業式は3/1だそうです。3/1です。よろしくお願いします。○○(娘の名前)は高橋先生が出席してくれるのを楽しみに今回はしておりますのでくれぐれも何卒よろしくお願い致します。写真及び動画もよろしくお願い致します。」
高橋弁護士は、上田元死刑囚の娘の卒業式に親代わりとして参列し、今も子どもたちとは定期的に連絡を取り合い、相談に乗っています。長年にわたる支援を続ける理由について、高橋弁護士は「上田さん個人に特別な思い入れはない。でもお子さんたちは、もともとは“知らないおじさん”だったはずの自分を頼ってくれている。人として、できる限り力になりたいと思う」と語りました。
「裁判で勝って助け出す」約束…守れなかった苦悩
上田元死刑囚は生前、自身に問われた罪について「何も知りません」と関与を否定し、死刑への恐怖で取り乱すこともありました。高橋弁護士は、上田元死刑囚に対し、「裁判で勝って刑務所から出してあげるから大丈夫」と伝えていました。しかし、約束を守ることができず、「約束を守れなくてごめんね」という苦い気持ちが今も消えないと語ります。
日本では死刑容認論が根強い中、高橋弁護士は問いかけます。「死刑囚として抹殺されるべき命なんてあるのでしょうか」。上田元死刑囚の死は、私たちに改めて死刑制度について考えさせられる出来事となりました。
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