英国予算案、市場の評価は二分！財政余力向上も投資家は警戒姿勢か？

英国のリーブス財務相が先日発表した政府予算案に対し、金融市場の大手機関投資家からは歓迎と警戒が入り混じった反応が見られました。特に注目されたのは、政府が財政規律を守りつつ確保した「財政余力」が市場の想定以上に高まった点です。

財政余力は向上！しかし潜む不安要素とは？

今回の予算案で評価されたのは、一連の増税措置を通じて政府の財政余力が高まったことです。これにより、イングランド銀行（英中央銀行）が今後利下げを継続しやすくなるとの見方も出ており、バンガードやアリアンツ・グローバル・インベスターズといった一部の機関投資家は、英国債に対して強気姿勢を維持しています。

しかし、フランクリン・テンプルトンやノーザン・トラスト・アセット・マネジメントなど、多くの運用担当者は依然として慎重な姿勢を崩していません。その背景には、短期的な歳出拡大計画がありながら、総額260億ポンドにも上る増税措置の大半が実施時期を後回しにされていることがあります。

もし今後、英国の経済成長が期待外れに終わり税収が想定を下回る一方で歳出が膨らめば、せっかく確保した財政余力が再び低下する恐れがあると指摘されています。

大手投資家が英国債に「待った！」その真意とは？

ノーザン・トラスト・アセット・マネジメントの国際債券責任者ダン・ファレル氏は、増税計画の先送りにより、予算案が信頼に足るかどうか不透明だと述べています。同氏は英国債よりもイタリアやスペインの国債への投資を好ましいとさえ言及しています。

さらに辛辣な意見を述べたのは、フランクリン・テンプルトンの欧州債券責任者デービッド・ザーン氏です。同氏は、リーブス財務相が来年再増税に追い込まれると予想。「リーブス氏はチャンスを逃し、課題を先送りする道を選んだに過ぎない」と厳しい評価を下しました。

国債利回り急低下の真の理由、予算案好感だけではなかった？

予算案発表後、26日には英長期国債利回りが9月以来の急低下を記録しました。しかし、多くの投資家はこれを予算案を好感した結果というよりも、いくつかの国債売り出しが中止になったという「供給要因」が大きく影響したとの見方を示しています。

RBCブルーベイ・アセット・マネジメントのマーク・ダウディング債券最高投資責任者は、英国債の利回りがさらに低下する局面があれば、それは「売り持ちポジション構築の機会とみなすだろう」と述べ、市場の警戒感が根強いことを示唆しています。

まとめ：英国経済の未来、依然として不透明感が残る

今回の英国予算案は、表面上は財政余力の向上という明るいニュースをもたらしました。しかし、大手機関投資家の多くは、増税の先送りや将来の経済成長に対する懸念から、英国債への慎重姿勢を維持しています。

予算案発表後の国債利回り低下も、供給要因によるものと見られており、市場が予算案を全面的に信頼しているわけではないことが浮き彫りになりました。英国経済が今後どのように成長し、政府が財政課題にどう対応していくのか、引き続き金融市場の動向に注目が集まります。