寂しくて涙が出る…韓国の高齢者の一人暮らし、深刻化する「関係貧困」
「誰も頼れる人がいない」「寂しくて涙が出る…」。韓国で一人暮らしの高齢者が増え続け、深刻化する関係貧困が社会問題となっています。家族との繋がりが希薄になり、孤立感を深める高齢者たちの現状と、その背景にある社会構造について掘り下げます。
一人暮らし高齢者の増加と「関係貧困」の現状
韓国の国家データ処によると、昨年、65歳以上の高齢者が一人で暮らす世帯は228万8807世帯に達しました。これは2019年(153万2847世帯)と比べて5年間で49.3%も増加した驚きの数字です。高齢化の進展と平均寿命の伸びが背景にありますが、それだけではありません。
中央日報の調査によると、一人暮らしの高齢者の40%が、助けが必要なときに頼れる人がいないと回答しています。最大の理由は、家族や知人がいないこと。保健福祉部の調査でも、体調不良や精神的な落ち込み、急な資金需要の際に助けてくれる人がいない高齢者は6.6%に上ります。一人暮らしの高齢者では、この割合がさらに高くなる傾向にあります。
孤独感を深める高齢者たちの声
70歳のナム・ジョンソクさんは、妻と死別してから20年、釜山で一人暮らしをしています。脚の手術後、健康状態は思わしくないものの、誰にも気軽に助けを求めることができません。「すべてを自分一人でやっていかなくてはならない」「寂しくて涙が出ることもある。これからは孤独がもっと深まる気がする」と語ります。
5年前に一人暮らしを始めたシンさん(66歳)も、うつ病治療で症状は改善したものの、一人でいるとふとした瞬間に憂うつな気分が湧いてくるそうです。社会福祉館で同じ境遇の高齢者と会うと、「たいていは体調が良くないという話を多くする」と話します。
コミュニケーション不足と地域社会との断絶
ゼロウェブの調査では、定期的に連絡を取り合う相手が全くいない高齢者は18%、気分が落ち込んだ時に相談できる人がいない高齢者は40%に達しました。また、地域社会との交流も活発とは言えません。調査回答者の6割が宗教活動や地域の集まりに参加しておらず、参加している人の多くも宗教活動が中心で、趣味の集まりなどへの参加は少ない状況です。
関係貧困がもたらす影響
関係貧困は、高齢者の精神的な健康に深刻な影響を与えます。2023年の高齢者実態調査によると、一人暮らしの高齢者の16.1%が抑うつ症状を抱えていると回答しており、高齢の夫婦世帯(7.8%)の2倍を超える数字です。
専門家からの提言
翰林大学社会福祉学科のソク・ジェウン教授は、「高齢者の経済的貧困問題と同じくらい、高齢の単身世帯が抱える関係貧困も重要な課題だ」と指摘します。高齢者が社会的な関係を失うと、認知能力の低下にも繋がる可能性があるため、文化センター利用バウチャーや大学生との交流など、関係を生み出すプログラムを積極的に推進すべきだと提言しています。
高齢化が進む現代社会において、関係貧困は無視できない問題です。高齢者が安心して暮らせる社会を実現するためには、経済的な支援だけでなく、社会との繋がりを築くための取り組みが不可欠です。
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