高畑勲監督の遺作『かぐや姫の物語』公開秘話:宮崎駿作品との同日公開案と、そこから生まれた奇跡
2026年1月9日の「金曜ロードショー」で放送されるスタジオジブリの高畑勲監督の遺作『かぐや姫の物語』(2013年)。本作は、監督が構想から半世紀以上も温めてきた『竹取物語』を基にした、日本アニメーション史に残る傑作です。その制作の裏には、宮崎駿監督との同日公開を巡る、意外なエピソードがあったのです。
当初は『風立ちぬ』と同日公開!?巨匠たちの“大博打”
『かぐや姫の物語』は、当初2013年夏に宮崎駿監督の『風立ちぬ』と同日公開される予定でした。この大胆な戦略を打ち出したのは、スタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーと西村義明プロデューサー。鈴木プロデューサーは「お互いの刺激のため。いい作品ができる手段だと思っている」と語り、西村プロデューサーは「高畑さんを奮起させるための、鈴木さんと僕の大博打だった」と振り返っています。
しかし、高畑監督は同日公開の提案に対し、「そうやって煽って、この作品を公開しようということですか」と疑問を呈し、製作費回収のためという鈴木プロデューサーの説明に協力的とはなりませんでした。実際、当時の絵コンテは完成しておらず、公開時期に間に合わせるには無理がある状況だったのです。
公開延期がもたらした奇跡:久石譲との初タッグ
結果的に『かぐや姫の物語』の公開は同年11月に延期されました。この延期が、思わぬ幸運をもたらしました。宮崎作品でおなじみの作曲家久石譲さんが、高畑作品に初めて参加できるようになったのです。
『風立ちぬ』と同日公開では、両方の音楽を手掛けることは不可能でしたが、公開延期によって久石さんのスケジュールが調整され、高畑監督の作品に音楽を提供することが実現しました。久石さんは、30年越しの夢が叶ったと喜びを語っています。もともと『風の谷のナウシカ』制作時に、高畑監督が久石さんを推薦していたというエピソードも残っています。
作品としての完成度を追求した結果
同日公開が実現していれば、夏休みに両作品をはしご鑑賞する映画ファンも多かったかもしれません。しかし、公開時期をずらすことで、『かぐや姫の物語』は日本アニメーション史上最高額の製作費(51.5億円)をかけ、137分・1423カットというスタジオジブリ作品最長の尺で、実験的なアニメーションとして完成しました。結果的に、作品としての完成度を高めることができたと言えるでしょう。
高畑勲監督の遺作である『かぐや姫の物語』。その制作の裏には、巨匠たちの熱い想いと、偶然から生まれた奇跡があったのです。
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