亡き母の面影?入院から数ヶ月待ちの人気「ぬいぐるみ専門クリニック」に保護者たちが訪れる理由
最近流行している「ぬい活」。お気に入りのぬいぐるみを旅行に連れて行ったり、カフェで一緒に写真を撮ったりする姿も珍しくなくなりました。そんな中、開業以来10年間で1万7千体ものぬいぐるみを治療してきた、杜の都なつみクリニックに注目が集まっています。
数ヶ月待ちの人気クリニック、その理由とは?
東京都内にある杜の都なつみクリニック。その患者は、なんと人間ではなく大切なぬいぐるみなんです。クリニックを訪れるのは、ぬいぐるみにとっての“保護者”たち。クリニックの院長を務めるのは、ぬいぐるみ写真集の著者でもある箱崎なつみさん(40歳)です。
「あぁ、久しぶりに会えたね……」
退院が決まったぬいぐるみに、保護者の女性が優しい眼差しを向けます。都内在住の遠藤恭子さん(50代)は、ミューちゃんというぬいぐるみを治療してもらうため、’25年8月にクリニックを訪れました。ミューちゃんは、遠藤さんの妹が幼い頃に母親からプレゼントされたもの。その姿は「鳥だか、犬だか、なんかわからない」と語るように、独特な形をしています。
「ミューちゃんの向こうに、母を見ているのかもしれません」
遠藤さんがミューちゃんに特別な思いを抱いているのには、深い理由がありました。遠藤さんの母親は’24年3月に84歳で亡くなられました。晩年は認知症を患い、最期は仕事で忙しい遠藤さんが看取ることができませんでした。「もっと母にしてあげられることがあったのではないか?」という後悔の念が、遠藤さんの心にずっと残っていたのです。
妹と母親の遺品を整理している際に、ふと見つけたミューちゃん。その姿を見た瞬間、遠藤さんは少女時代の思い出が蘇りました。「ミューちゃんの向こうに、母を見ているのかもしれません」と語る遠藤さんの表情は、深い愛情と切なさに満ちていました。
専門家の手でよみがえる、大切な思い出
杜の都なつみクリニックでは、ぬいぐるみの修理・再生を行っています。縦に伸び切っていたぬいぐるみを丸くしたり、取れた目を元の位置に戻したりと、細部にまでこだわった丁寧な治療が特徴です。入院中のぬいぐるみには、他のぬいぐるみがお供として付き添うことも可能。これは、家族が心細くないようにというクリニックの優しい配慮です。
遠藤さんは、ミューちゃんの治療を通して、亡き母との思い出を再び鮮やかにすることができました。「縦に伸び切っていたのをマルッとしてくれて、おめめも元のとおりに寄せてくれた。細かく調整してくださって『ウチに来たとき、こんな感じだったんだなあ』って」と、遠藤さんはクリニックの治療に感謝の言葉を述べました。
ぬいぐるみは、単なるおもちゃではありません。大切な思い出を縫い、温かな記憶を包む、かけがえのない家族なのです。