中国渡航自粛で静岡・浜名湖の温泉街に暗雲 1800万円の売り上げ消失…インバウンド特化の宿の悲鳴
台湾有事をめぐる政治的な問題から、中国政府が日本への渡航を自粛するよう勧告したことで、静岡県浜名湖畔の舘山寺温泉でインバウンド需要に依存していた宿泊施設が深刻な打撃を受けています。コロナ禍からの回復をようやく見始めていた温泉街に、再び暗雲が立ち込めています。
中国渡航自粛勧告で予約が激減
11月14日に発表された中国の渡航自粛勧告を受け、舘山寺温泉の宿泊施設ではキャンセルが相次ぎました。ある旅館の総支配人は「コロナ禍を経てようやく軌道に乗ってきたのに…」と嘆き、12月中に入っていた団体客90件(約3000人)分の予約が全てなくなったことを明らかにしました。
インバウンド特化戦略の苦境
舘山寺温泉は、東京、富士山、京都、大阪を結ぶ中国人が好む「ゴールデンルート」上に位置しており、以前から中国人観光客に人気がありました。今回休業に追い込まれた旅館は、買収前から中国人限定で営業しており、インバウンド需要に特化した戦略をとっていました。しかし、今回の渡航自粛勧告により、その戦略が大きく裏目に出てしまった形です。
コロナ禍との違い…補償なしの苦境
コロナ禍の休業時には国からの補助金などの支援がありましたが、今回はそうした補償はありません。総支配人は「12月だけで1800万円以上の売り上げがなくなる。タイやベトナムからのインバウンド客を呼び込もうとしているが、簡単にはシフトできない」と、厳しい現状を語っています。パート従業員14人全員が休業を余儀なくされ、社員は施設の管理業務に追われています。
温泉街全体への影響を懸念
舘山寺温泉観光協会の関係者も、「中国人客は宿泊だけでなく、温泉街で飲食もする。渡航自粛が長引けば、飲食店などにも影響が及ぶ可能性がある」と懸念を示しています。湖岸に建つ他のホテルも休館を示す看板を掲げており、温泉街全体にボディーブローのように影響が広がっています。
1200年以上の歴史を持つ舘山寺温泉は、年間200万人以上が訪れる人気の観光地ですが、今回の事態は、インバウンドに依存した観光地の脆弱性を示す事例と言えるでしょう。関係者たちは、一日も早い日中関係の改善を待ち望んでいます。
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