「今のままでもいい」…福島第一原発周辺で暮らす人々のリアルな日常を描いた映画『ロッコク・キッチン』
東日本大震災から15年。福島第一原子力発電所事故の影響が色濃く残る地域で、今もなお「普通」を生きる人々の姿を追ったドキュメンタリー映画『ロッコク・キッチン』が公開中です。東京からでは見えない、被災地の「本音」を届ける本作の舞台は、東京・日本橋から宮城県・仙台市を結ぶ国道6号線、通称「ロッコク」。
映画『ロッコク・キッチン』が描く、被災地のリアル
ロッコク沿いには、帰還困難区域に指定されたエリアも存在します。それでも、そこで暮らし続ける人々の姿を、映画は「なに食べて、どう生きてるんだろう?」というシンプルな問いから描き出します。被災地を「かわいそうな場所」として切り取るのではなく、そこに暮らす一人ひとりの複雑で温かな日常を、率直に、そして丁寧に綴る点が特徴です。
取材の裏側と、映画に登場する3人の人物像
本作は、ノンフィクション作家の川内有緒さんが著書『ロッコク・キッチン』を執筆したことから生まれました。川内さんと映像作家の三好大輔さんが共同監督を務め、「野次馬的発想」から始まった取材の経緯や、被写体との距離の取り方について語られています。
映画では、大熊町でおばあちゃんの家があった場所で夜だけ開く書店『読書屋息つぎ』の武内優さん、インド出身で双葉町を拠点に観光業に携わるスワスティカさん、写真家で『おれたちの伝承館』館長の中筋純さんの3人が軸となっています。川内さんは、この3人を選んだ理由について、それぞれが持つ個性と物語が、映画に深みを与えると判断したと語ります。
「福島を描くなら被災者でなくてはならない」という固定観念への挑戦
スワスティカさんは移住者であり、「福島を描くなら被災者でなくてはならない」という固定観念を打ち破る存在です。川内さんは、「被災者だからかわいそう」という視点ではなく、「そこに生きる一人ひとりの人間らしさ」を描きたいと考えたといいます。
過去を知ることで、今を伝える
中筋純さんは、チェルノブイリの廃墟を撮影した経験を持ち、被災地を外から見つめる視点と、「過去を知っていることの重要性」を映画に持ち込みました。川内さんは、中筋さんの「一番かっこいいところを撮る」ことを自身のミッションとして、撮影に臨んだそうです。
ロッコク沿いの土地の魅力
川内さんは、ロッコク沿いの土地に「会社を辞めてそこに住んでいる人もいるし、わざわざ仕事を見つけてきたという人もいて、町の魅力はまだ言語化しきれていないけれど、確かにある」と語ります。移住者の多くは、使命感だけでなく、「自分がやりたいことができる土地」だからこそ来たと考えています。
映画『ロッコク・キッチン』は、被災地の現状を伝えるだけでなく、「普通に生きること」の尊さ、そして「未来」への希望を私たちに提示してくれる作品です。ぜひ、劇場でそのリアルな姿に触れてみてください。