「恋愛しない」ヒロインは恋に落ちるべき?『人としてつき合えたら』作者が語る、型にはまらない人間関係の形
近年、少しずつ耳にするようになった「アセクシャル(他者に性愛感情を抱かない)」や「アロマンティック(他者に恋愛感情を抱かない)」という言葉。これらをテーマにした漫画『人としてつき合えたら』が、読者の間で大きな共感を呼んでいます。なぜ作者のみやざき明日香さんは、あえて「恋愛をしない」キャラクターを描こうと思ったのでしょうか?その創作の裏側に迫ります。
「恋愛しないはずのヒロインが恋に目覚める」展開へのモヤモヤ
物語の中心人物である月城さんは、アセクシャルの女性です。みやざきさんは、エンタメ作品における「恋愛しないと言っていたヒロインが、イケメンと出会って恋に落ちる」という定番の展開に、ずっと違和感を抱いてきたといいます。「最初に恋愛しないと言ったなら、最後までそのままでいてほしい」という作者の強いこだわりから、月城というキャラクターは生まれました。誰かと恋愛することだけが幸せのゴールではない――そんな多様な生き方を肯定する物語が、今、多くの読者の心を捉えています。
「非モテの呪い」と「モテる苦しみ」、それぞれの生きづらさ
本作には、恋愛に悩む男性キャラクターも深く描かれています。一つは、モテないことにコンプレックスを抱く「非モテの呪い」に苦しむ主人公の朝倉くん。そしてもう一人は、モテるけれど自分を偽ることに疲れてしまったリョウ兄です。作者のみやざきさんは、男性社会にある「男たるものこうあるべき」という無意識の規範が、いかに個人の生きづらさを生んでいるかを浮き彫りにしました。性愛感情を伴わない「人間同士の強い絆」を描くことで、従来のラブストーリーとは一線を画した人間ドラマを展開しています。
「見えにくい」男性のアセクシャルという存在
特に読者から反響が大きかったのが、リョウ兄の描写です。男性のアセクシャルは、女性以上に社会で見えにくい存在とされています。みやざきさんは、男性同士の親密な関係がすぐ「BL(ボーイズラブ)」や「ネタ」として消費されてしまう風潮に疑問を呈し、性愛の入らない純粋な愛情を描くことの重要性を語りました。この作品を通して、読者が自分の感覚や他者の多様性に気づくきっかけになれば、と作者は願いを込めています。気になる方は、ぜひ