200冊の写本が語る歴史のミステリー!『出雲国風土記』と「近世写本文化論」の魅力に迫る
あなたは「写本」と聞いて、どんなイメージを抱きますか?
遥か昔に手書きで書き写された貴重な記録――それはまるで、過去からのタイムカプセルのようです。
この度、2025年11月14日に発売される髙橋周氏の書籍『近世写本文化論:出雲国風土記を書写した人々』は、そんな「写本」の世界、特に『出雲国風土記』の写本が持つ奥深い物語を解き明かします。
200冊を超える写本を丹念に調査し、歴史の知られざる一面を浮かび上がらせる、まさに歴史探偵のような壮大なプロジェクト。
その研究の舞台裏と、本書が私たちに教えてくれることについてご紹介しましょう!
200冊の写本から紐解く!知られざる歴史の系譜
『出雲国風土記』は、今から約1300年前、天平5年(733年)にまとめられた、現在の島根県東部の地理や文化を記した貴重な地誌です。
この風土記の写本が、なんと200冊以上も現存しているというから驚きですよね。
髙橋氏の研究は、これらの写本を「全文比較」するという、想像を絶する作業から始まります。
例えば、ある写本は全文で約18,000字。
これを200冊分となると、まさに気の遠くなるような文字数との格闘です!
なぜ全文比較が必要なのでしょうか?
それは、部分的な比較だけでは見えない、写本ごとの「つながり」や「歴史的背景」が、全文を見ることで初めて明らかになるからです。
本書の核心は、ウェブサイトで公開されている「校異表」にあり、本文執筆よりもこの校正作業に膨大な時間が費やされたといいます。
この地道な作業によって、写本同士の「系譜」が浮かび上がってきました。
例えば、(105)古田氏本と(106)狩谷氏本は、奥書だけでなく、写本の異同にも共通点が多く、屋代弘賢が賀茂真淵旧蔵本を親本にして書写したことが裏付けられます。
さらに研究を進めると、賀茂真淵が京都の公家(近衛家や藤波家)の写本から影響を受けていた可能性まで見えてくるのです。
これは、真淵が京都にいた頃に『出雲国風土記』を書写、あるいは入手していたことを示唆しており、新たな歴史的事実につながるかもしれません。
このように、本書は写本そのものの関係性だけでなく、その背後にある人々の営みや時代の流れを鮮やかに描き出しているのです。
写本調査は「人の縁」が導く壮大な探求!
髙橋氏の写本調査の道のりは、まさに「人の縁」によって拓かれました。
研究のきっかけは、ある日、郷原家本の所蔵者である郷原さんからの質問に答えるためだったといいます。
最初は影印(写真)を参考にしていたものの、多くの写本を実際に確認する必要性を感じ、全国各地の所蔵先へと足を運びます。
図書館や博物館だけでなく、個人宅や企業を訪れることもあり、その都度、職員の方々や所蔵者の方々が親切に対応してくださったとのこと。
まさに、本書は多くの人々の協力なしには生まれ得なかった結晶なのです。
物理的な距離が離れている写本の調査には、図書館を通じた複写依頼も活用されました。
費用はかかるものの、これは広範囲の写本を網羅的に調べる上で非常に有効な手段です。
また、研究機関に所属していなくても、最寄りの公共図書館の紹介状があれば、貴重な写本を調査できるという、知られざる実情も教えてくれます。
さらに、写本の所在情報を得るためには、国文学研究資料館の「国書データベース」だけでなく、各種目録、他の研究者からの情報、さらにはインターネットのオークションサイトまで、あらゆる可能性を探る努力が続けられました。
インターネットで情報が簡単に手に入る現代においても、写本を未来へと伝え、その価値を解き明かすのは、やはり「人」の力である――。
髙橋氏の言葉は、デジタル化が進む現代社会において、改めて人と人とのつながりの大切さを私たちに教えてくれます。
『近世写本文化論:出雲国風土記を書写した人々』は、歴史好きはもちろん、知的好奇心旺盛な10代~30代の皆さんに、知られざる歴史の深淵と、それを探求する人々の情熱を届けてくれる一冊となるでしょう。
ぜひ、手に取って、あなたも歴史の探求者の一員になってみませんか?
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