EC購入の自動化「レベル5」は実現可能か?Stripeが描く未来と課題
ChatGPTなどのAIサービスを活用した新しいショッピング体験が注目を集める中、EC購入の自動化「エージェンティック・コマース」が進化の段階を経て、最終的に完全自動化を目指す動きが加速しています。決済インフラ大手のStripeは、その進化段階を自動車の自動運転レベルになぞらえ、現状と課題、そして今後の展望を明らかにしました。
エージェンティック・コマースとは?今さら聞けない基本
エージェンティック・コマースとは、AIエージェントがユーザーの代わりに商品検索から購入までを代行する仕組みです。例えば、「100ドル以下のランニングシューズのおすすめ」とChatGPTに質問すると、AIが最適な商品を提案し、チャット画面内でそのまま購入まで完了できるというものです。OpenAIが発表した「InstantCheckout」や、エージェントコマースのためのプロトコル「ACP(AgenticCommerceProtocol)」はその代表例と言えるでしょう。
日本企業の関心は高い!しかし、導入には課題も
Stripeが国内の企業1,000社以上を対象に実施した調査によると、エージェンティック・コマースという概念は既に浸透し始めており、約7割の企業が2~3年以内に日本のビジネスに何らかの影響を及ぼすと予測しています。64.4%もの企業が3年以内の導入を計画しており、自動化・業務効率化や購買率・売上向上への期待は大きいようです。
一方で、セキュリティ対策、顧客データ基盤の整備、決済インフラの整備、API・システム連携などが課題として挙げられています。特に、個人情報保護や不正利用への対策は、エージェンティック・コマース普及の大きなハードルとなるでしょう。
自動運転レベル分けで見るエージェンティック・コマースの進化
Stripeは、エージェンティック・コマースの進化段階を以下の5段階で定義しています。
- レベル1:入力作業の自動代行(支払いや配送情報の自動入力)
- レベル2:文脈による検索(曖昧な目的から商品を提案・意思決定を支援)
- レベル3:情報の継承(履歴や好みの活用。パーソナライズされた提案)
- レベル4:判断の移譲(「予算1万円」などの設定のみで購入まで自律)
- レベル5:先回り購入(AIが先回りして必要なものを用意)
現状のエージェンティック・コマースは、レベル1~2付近であり、最終目標であるレベル5「先回り購入」の実現には、まだ多くの課題が残されています。
AI同士の自動決済「マシン決済」が鍵を握る
Stripeは、AIエージェント同士が自動的に決済を行なえるようにするプロトコル「マシン決済(MachinePaymentsProtocol/MPP)」を展開しています。これは、決済特化型ブロックチェーンのTempoと共同開発したもので、AIエージェントの決済までの作業に応じて予算を設定することで、人間を介さずに自動的に目的の動作を実行し、決済を可能にします。
Stripeジャパンのダニエル・へフェルナン代表取締役は、MPPを通じて、まずは外部リソースへのアクセスに少額の予算を割り当てる「スモールスタート」で実績を積み重ねていくことで、レベル5の実現に近づいていけると述べています。
OpenAIの戦略転換は影響あるのか?
OpenAIのInstantCheckoutは、まだ日本では開始されていません。また、OpenAIが企業を重視した戦略に転換し、コマースの重要度を下げているとも伝えられています。しかし、Stripeジャパンの平賀充代表取締役は、「AIを使ったコマース自体が始まったばかりであり、市場の動向を見守りながら、技術の変革を注視していく」とコメントしています。
エージェンティック・コマースは、まだ始まったばかりの分野であり、技術的な課題や社会的な受容など、多くのハードルが存在します。しかし、Stripeをはじめとする各社の取り組みによって、ECの未来は大きく変わりつつあると言えるでしょう。