94歳の母が繰り返した「入院いややなあ」…在宅看取りの一週間で交わした「最後のありがとう」
東京から来た孫の龍彦と「入院いややなあ」——94歳の母は、歩行器にすがりながら小さくそう繰り返していました。やがて始まった在宅での看取り。食べられなくなり、薬に苦しみ、死を口にする日々のなかで、息子が受け取ったのは、意外なほど穏やかな最期の言葉でした。
「入院いややなあ」独り言の背景
9月4日月曜日、母は歩行器でトイレに向かう途中、ひたすら「入院いややなあ」「入院いややなあ」と独り言を繰り返していました。小声で、まるで歌うように。これは誰かに聞かせるための言葉ではなく、心の中の叫びのようでした。きっと、家にいたい。しかし、病院に行けば、病院食と孤独な時間が待っているのではないか…そんな不安が、母の心を支配していたのでしょう。
訪問診療と母の苦しみ
柿の木に縄をかけた翌日、訪問診療が始まりました。ヴォーリズ記念病院の奥野医師と看護師が、自宅を訪れてくれました。医師は、母の言葉に耳を傾け、「苦しくて苦しくて、夜も寝られませんし、自殺のことばっかり考えてるんです。柿の木に縄かけて死ぬ…」という切実な訴えを受け止めました。しかし、医師は優しく語りかけ、「困りましたねー、そこの木の枝ずいぶん高いですよ。それにねー、そんなんしたら一生懸命応援してる息子さんもご家族もみんな、残された人たちがほんまにかわいそうですよ」と、希望を与えようとしました。
QOLの低下と甘いものへの欲求
QOLはわずか一週間で大きく低下し、母はほとんど食事が取れなくなりました。お粥を少し口にする程度で、ゼリーやシャーベット、フルーツを少量食べるのがやっとでした。その日の気分によって好きなフルーツも変わり、甘酸っぱいものを好む日もありました。医師の診察後には、「ガリガリ君」パイン味を少しだけかじり、わずかな喜びを見出していました。
在宅看取りで見えた家族の絆
このニュースは、在宅看取りを選択した家族の葛藤と、母の最期の願いを尊重しようとする姿を描いています。入院を拒否し、自宅で穏やかに人生を終えたいと願う母。そして、その願いを叶えようと奔走する家族。家族の絆と、尊厳ある死について考えさせられる記事です。