半世紀以上にわたり埼玉県の「原爆の図丸木美術館」で展示されていた巨大な木彫りレリーフ「いのちの叫び」が、美術館の改修に伴い故郷の広島に帰ってきました。1972年に廿日市中学校の生徒たちが平和学習の一環として制作したこの作品は、被爆の記憶と平和への願いを込めて、多くの人々の心を揺さぶってきました。

制作から帰郷まで…波乱の道のり

1972年、廿日市中学校の全校生徒344人が、広島を代表する漫画家・丸木位里さんの呼びかけに応じ、平和学習の一環としてこのレリーフを制作しました。縦2.3m、横5.5mという巨大な作品には、被爆後の凄惨な光景から、未来への希望を象徴する花や子どもたちの笑顔まで、様々なメッセージが込められています。

1974年には丸木位里さん立会いの下、原爆の図丸木美術館に贈呈され、正面玄関上部の外壁に展示されてきました。しかし、2025年からの大規模改修工事に伴い、レリーフは廃棄されることが決定。長年の風雨にさらされ、版木も劣化しており、再設置が困難だったのです。

元生徒たちの熱意がレリーフを救う！

廃棄の危機を知った中本敬章さんと妻の由佳里さん。実は2人とも、このレリーフを制作した当時の廿日市中学校の生徒だったのです！「この作品を絶対に失いたくない！」という強い思いから、2人は美術館に働きかけ、レリーフの撤去作業を引き受けました。

まるでジグソーパズルのような作業は想像以上に困難を極めましたが、2人は諦めませんでした。そして、レリーフは無事に撤去され、広島へと帰還することになったのです。

修復作業と未来へのメッセージ

現在、廿日市市内の資材置き場では、レリーフの修復作業が進められています。中本夫妻をはじめ、多くの人々が魂を込めて、作品の再生に取り組んでいます。

修復を通して、中本敬章さんは「この作品は、当時の生徒たちの思いが詰まった貴重なものです。未来世代に、このメッセージをしっかりと伝えていきたい」と語りました。

「原爆の図」とともに、平和への祈りを込めて

修復されたレリーフは、今後、広島のどこかで展示される予定です。丸木位里さんの「原爆の図」とともに、被爆の記憶を後世に語り継ぎ、平和への願いを込めて、多くの人々の心を揺さぶるでしょう。

このレリーフが、私たちに平和の尊さを改めて教えてくれることでしょう。