世界的に有名なストリートアーティスト、バンクシーの新作がロンドンに登場し、大きな注目を集めています。クリスマスの賑わいとは裏腹に、ホームレス問題という社会の現実を浮き彫りにする作品です。

作品の内容と場所

描かれているのは、厚着をした2人の子供が地面に寝そべり、ひとりが空を指差している姿。12月19日にまず、ロンドンの中心部オックスフォード・ストリートにあるセンターポイントというビルの外壁に現れました。その後、12月22日にはベイズウォーター地区のクィーンズ・ミュウズの建物にも同じ絵柄が登場しています。

バンクシーは自身のインスタグラムアカウントでベイズウォーター地区の作品を公開し、事実上自身の作品であることを認めています。専門家によれば、2つの作品は同一人物によるもので間違いないとのことです。

作品に込められたメッセージ

バンクシーのエキスパート、ジェイソン・トムキンス氏は、このグラフィティが「明らかにホームレスたちを取り巻く現状への警鐘」だと指摘しています。特に、手前の子供の表情が、2018年にウェールズで描かれた作品に登場する少年に酷似している点を挙げ、不遇な状況下の人々への関心を促す意図があるとしています。バンクシーが過去作と酷似した人物を再度描くのは珍しいことだそうです。

背景にある社会問題

センターポイントは、1966年に建てられたブルータリズム様式のビルで、完成当初は長期間空室が続き、当時の住宅問題を象徴していました。現在では高級住宅やオフィスが入っていますが、その名前を借りてホームレス支援団体も活動しています。オックスフォード・ストリートはクリスマスシーズンで賑わいを見せていますが、グラフィティが物語る現実とのギャップが際立っています。

ベイズウォーター地区の作品が描かれたのは空き家だったとのことですが、バンクシーがインスタグラムに投稿した数時間後には保護のため板が打ち付けられ、現在は見ることができません。

バンクシーの作品は、常に社会問題に鋭い視点を向け、私たちに「見て見ぬふりをしない」ことの大切さを訴えかけています。今回の作品も、クリスマスという華やかな時期だからこそ、ホームレス問題という現実を改めて認識し、考えるきっかけを与えてくれるでしょう。