広島の路上生活者「15人」に見る見えにくい貧困…食料配布には家がある困窮者も
かつて広島市で見かけられた路上生活者の数は減ったものの、貧困の問題は依然として根強い。最新の調査では路上生活者は15人だが、生活困窮者による食料配布の列には、家がある人々も含まれている。街の片隅でひっそりと暮らす人々の現状と課題を探る。
路上生活者の減少と「見えにくくなった」貧困
広島市中心部の一筋の通路で、壁にもたれ身を縮める人々の姿が確認された。59歳の男性は、神奈川県から広島に来たという。日中は商業施設で時間を潰し、夜は通路で寝る。生活費は姉からの仕送りで、週に一度ネットカフェでシャワーを浴びる。仕事がなくなったことがきっかけで路上生活を始めたが、その理由を語ることはためらう様子だった。
厚生労働省の統計によると、広島市の路上生活者は2003年に156人だったが、2025年には7人まで減少。26年の省まとめでは8人増えて15人になる見込みだ。しかし、支援団体「野宿労働者の人権を守る広島夜回りの会」の播磨聡副代表は、「路上生活者は昼間は街に散らばり、夜更けに定位置の寝場所に移動するため、把握が難しい」と指摘する。かつては橋の下や港湾、商店街に姿を見せ、社会課題として認識されやすかったが、現在は「見えにくくなった」という。
自立支援の取り組みと残る課題
広島市では、1994年のアジア大会やアストラムライン建設工事で日雇い労働者が集まったことが路上生活者の急増のきっかけとなった。その後、2002年のホームレス自立支援法、2015年の生活困窮者自立支援法の施行を受け、市は民間と連携して住居や就労先の確保を支援してきた。24年度には144人、25年度(11月まで)には101人が、一時的にシェルターで暮らしながら生活保護を申請している。
しかし、市保護自立支援課の荒井浩一課長は、「路上で寝起きしていなくても、知人宅やネットカフェなどを利用し、住居が不安定な人もいる。支援制度につながるよう周知する必要がある」と述べる。路上こそが居場所だった人もいる。中区の77歳の男性は、十数年続けた路上生活を昨年11月にやめ、賃貸住宅に住み始めた。寝床でいたずらされ、恐怖を感じたことがきっかけだった。「自分本位の生活はしんどくはなかったし、不幸とは思っていない。落第者として無視されるのが一番安心だった」と、過去の日々を懐かしむ。
生活保護受給者も訪れる食料配布の現場
近年、路上生活者よりも目を引くのが、家のある生活保護や年金で暮らす困窮者たちだ。2月上旬の午後9時過ぎ、広島市中心部の通路で行われた夜回りの会の食料配布には24人が集まった。むすびやカップ麺、みそ汁を受け取り、近況を報告する。そのうち路上生活者は7人だった。
中区の56歳の男性は、路上生活を経て10年近く食料配布を利用している。「生活保護を受けているけれど家賃を除いたら、かつかつ。さらに物価高で米が前の半分の量しか買えなくて麺類で補っている」と窮状を訴える。夜回りの会の活動記録によると、06年には約100人の路上生活者を確認していたが、10年代に入ると生活困窮者の方が目立つようになり、現在は逆転している。
広島市社会福祉協議会も14年度からフードバンク事業に取り組んでおり、月1回の食料配布には近年、年に千世帯前後が利用。24年度は1070世帯で、うち624世帯が生活保護を受給していた。家賃や公共料金の支払いが滞っている世帯も約半数に上る。
路上生活者の減少は、自立支援の取り組みが進んだ結果と言える。しかし、見えにくくなっただけで、貧困の問題は依然として存在し、家がある困窮者たちの生活も厳しい状況にある。広島市は、支援制度の周知を強化し、生活に困窮する人々に寄り添う姿勢が求められている。