「売名行為」と罵られ、酒に溺れた医師…イタイイタイ病の真実に挑んだ男の壮絶な闘い
孤立無援の中で突き止めた「イタイイタイ病」の正体
今から半世紀以上前、日本を震撼させた公害病「イタイイタイ病」。その原因が神岡鉱山からの排水にあると突き止めた医師、萩野昇氏が受けた仕打ちは、想像を絶するものでした。研究を公表した途端、彼を待っていたのは称賛ではなく、地域社会からの激しい反発と誹謗中傷だったのです。「売名行為はやめろ」「そんなことを言ったら米が売れなくなる」といった心ない言葉や、命の危険を仄めかす脅迫が相次ぎました。当時、地域経済を支えていた企業を相手にすることの難しさは、現代の私たちが想像する以上に過酷な環境だったことが伺えます。
精神の摩耗と酒、そして公害病認定の光
周囲からの孤立により、一時は精神を摩耗させ酒浸りの日々を送っていた萩野氏。しかし、1962年の妻の死を転機に断酒を決め、再び研究者としての使命感に燃え上がりました。やがて彼の執念は、被害者や遺族たちの組織「イタイイタイ病対策協議会」による裁判へと繋がっていきます。1968年、ついに厚生省がカドミウムによる慢性中毒が原因であると公式に認定。これが日本初の公害病認定となり、萩野氏もその功績を認められることとなりました。企業の利益と住民の命が衝突したこの事件は、現代を生きる私たちが決して忘れてはならない歴史の教訓と言えるでしょう。詳細については、書籍