計算論的思考の各側面とロボットプログラミングの習熟度の関係性:コンピュータ教育の学生を対象とした調査
📌 この記事の結論
- 計算論的思考の「アルゴリズム思考」は、ロボットプログラミングの習熟度に最も強く良い影響を与えます。
- 「分解」スキルは、適切に活用されないと学習成果に逆効果になる可能性があります。
- 「評価」スキルも、使いすぎるとプログラミングの効率を妨げる場合があります。
- 学生の自己認識と実際の成績は大部分で一致しますが、分解スキルでは認識と成績にギャップが見られました。
- これらの知見は、ロボットプログラミング教育においてアルゴリズム思考の強化と分解・評価スキルの適切な指導の重要性を示唆しています。
1. ロボットプログラミングと計算論的思考の重要性
近年、ナイジェリア南東部の教育現場では、伝統的な学習方法からロボットプログラミングへの移行が進んでいます。これは単にコードを学ぶだけでなく、「計算論的思考(CT)」という新しい思考方法を育むことを目的としています。
計算論的思考(CT)とは、複雑な問題を解決するための思考プロセスであり、データを論理的に整理・分析し、問題を小さな部分に分解し、それらを解決するための手順(アルゴリズム)を作成するといった特徴を含みます。CTは、コンピューター科学の分野に進む学生だけでなく、全ての学生にとって基礎的なスキルとして認識されています。
CTには、抽象化、アルゴリズム思考、分解、評価、一般化といった様々な認知スキルとプロセスが含まれます。これらのスキルは、ロボットプログラミングのような実践的な活動を通じて強化され、学生の学習意欲やSTEM分野への理解を深めることが期待されています。
しかし、CTとロボットプログラミングに関する研究の多くは欧米で行われており、アフリカ、特にナイジェリアのような地域に焦点を当てた研究はまだ少ないのが現状です。また、CTの各側面がロボットプログラミングの学業成績にどのように影響するかを調査した相関研究も不足しています。
本研究は、このギャップを埋めることを目的とし、ナイジェリア南東部のコンピュータ教育の学生を対象に、計算論的思考の各側面とロボットプログラミングの習熟度の関係性を探ります。
2. 紹介する論文の概要
📄 論文情報
| タイトル | EXPLORING THE RELATIONSHIP BETWEEN COMPUTATIONAL THINKING DIMENSIONS AND ACHIEVEMENT IN ROBOTICS PROGRAMMING AMONG COMPUTER EDUCATION STUDENTS |
|---|---|
| 著者 | Fadip Audu Nannim, Moeketsi Mosia, Modesta Ero Ezema, Felix Egara |
| 掲載誌 | Journal of Technology and Science Education, 16巻1号, 95-108ページ (2026年) |
| 研究対象 | ナイジェリア南東部のコンピュータ教育の学生105名 |
| 研究期間 | 2025年3月〜10月 (論文の受理・発行日より推測) |
研究の目的
本研究は、ナイジェリア南東部のコンピュータ教育の学生を対象に、計算論的思考(CT)の各側面がロボットプログラミングの習熟度にどのような関係性を持つかを調査することを目的としています。特に、これまで研究が不足していたCTの各側面と学業成績の相関関係に焦点を当てています。
研究の方法
この研究では、変数間の関係性を操作せずに測定する「相関研究デザイン」が採用されました。ナイジェリア南東部の3つの大学および学位授与機関から、合計105名の2年生のコンピュータ教育学生が参加しました。
学生たちは、Arduinoを用いた8週間のロボットプログラミングコースを受講しました。
データ収集には、以下の2つのツールが用いられました。
- 計算論的思考評価アンケート(CTAQ):学生の抽象化、分解、アルゴリズム思考、評価、一般化の5つのCTスキルを評価する19項目からなる5段階評価のアンケートです。
- ロボットプログラミング習熟度テスト(RPAT):Arduinoプログラミングの概念、問題解決、実装に関する25問の多肢選択式テストです。
収集されたデータは、ピアソン積率相関係数と重回帰分析を用いて分析されました。
3. 研究結果のポイント3つ
研究の結果、計算論的思考の各側面とロボットプログラミングの習熟度の間に興味深い関係が明らかになりました。特に注目すべき3つのポイントは以下の通りです。
✅ ポイント1:アルゴリズム思考が最も重要な予測因子!
アルゴリズム思考は、ロボットプログラミングの習熟度と最も強い正の相関(r = .596, p < .001)を示しました。これは、問題を順序立てて解決する能力が高い学生ほど、プログラミングの成績が良いことを意味します。例えば、複雑な迷路をロボットが通過するプログラムを作成する場合、どのような順番でどのコマンドを実行するかを論理的に考える力が成績に直結すると言えるでしょう。
また、重回帰分析においても、アルゴリズム思考は習熟度の最も強い正の予測因子(β = 1.116, p < .001)であることが示されました。
✅ ポイント2:分解スキルと評価スキルは時に逆効果!?
意外なことに、分解スキルは習熟度と負の相関(r = −.392, p < .001)を示しました。さらに、重回帰分析では分解(β = −.630)と評価(β = −.449)が習熟度に負の影響を与えることが明らかになりました。
これは、問題を細かく分解しすぎたり(例えば、Pythonで書くべきコードを過剰に小さな関数に分割し、全体の流れを見失う)、コードのデバッグや効率性の評価に過度に時間をかけすぎたりすることで、かえって全体のプログラム構築や完成を妨げてしまう可能性があることを示唆しています。
✅ ポイント3:計算論的思考全体が習熟度の7割以上を説明!
5つの計算論的思考(CT)の側面(抽象化、分解、アルゴリズム思考、評価、一般化)は、学生のロボットプログラミング習熟度の74.5%もの分散を説明することが分かりました(r² = .745, F(5,99) = 57.845, p < .001)。これは、CTスキル全体がロボットプログラミングの成功に非常に強い予測力を持っていることを示しています。
また、学生の自己認識と実際の成績は大部分で一致しましたが、分解スキルに関しては負の相関があり、自己認識と実際のパフォーマンスの間にギャップがあることが示唆されました。
4. ADVANCEの現場から見た実感
堺市南区のプログラミングスクールADVANCEで実際にプログラミングを教えている講師としての意見は以下の三つです
🎮 現場で感じる3つの変化
アルゴリズム思考は学習の「地図」
ADVANCEでも、Scratchでキャラクターを動かす順序や、Roblox Studioでゲームのロジックを組む際に、「次に何をすべきか」「どうすれば効率的か」を考えるアルゴリズム思考の重要性を日々感じています。これが明確な生徒は、新しい課題にもスムーズに取り組めます。
分解しすぎると「森」が見えなくなる?
論文の「分解」の負の相関は驚きでしたが、私たちも「細かく分解しすぎて、全体の目的を見失う」生徒を見かけることがあります。例えば、Unityでゲームを作る際に、各パーツの機能ばかりに集中しすぎて、ゲーム全体の面白さや流れを考慮できない、といったケースです。分解は重要ですが、統合する視点も同時に育む必要があります。
「評価」は自信とバランスが重要
「評価」が負の影響を持つという結果は、完璧主義に陥りすぎてデバッグに時間をかけすぎたり、自分のコードに自信が持てずに何度も修正を繰り返したりする状況を想起させます。適切な評価はバグを発見し、コードを改善するために不可欠ですが、自信を持って効率的に問題解決に取り組むバランスが求められます。
ADVANCEでは、生徒がゲーム制作を通じてこれらのスキルをバランス良く習得できるよう、実践的な課題と講師によるきめ細やかなサポートを提供しています。特に、「目的達成のための論理的な思考(アルゴリズム思考)」と「問題解決後の統合力」に重点を置いています。
5. 保護者の方へ:家庭でできること
お子様がプログラミング学習で成功を収めるために、ご家庭でできることがいくつかあります。
身近な問題解決を促す
日常の小さな問題(例:「おもちゃの片付けの順番を考えよう」「朝の準備の効率を良くするには?」など)を、順序立てて解決する練習を促しましょう。これはアルゴリズム思考の基礎となります。
失敗を恐れない環境作り
プログラミングは「試行錯誤」が不可欠です。お子様がプログラムでエラーを出しても、「失敗は成功のもと」と励まし、なぜエラーが起きたのか一緒に考える時間を作りましょう。これにより、評価スキルが健全に育まれます。
全体の流れを意識させる
何か大きな目標(例:「夏休みの自由研究を完成させる」)に取り組む際、最終的な形をイメージさせながら、小さなステップに分けて計画を立てさせましょう。分解と統合のバランス感覚を養うのに役立ちます。
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堺市南区のプログラミングスクールADVANCEでは、Scratchからはじめて、Roblox、Unity(C#)まで段階的に学べます。
研究で効果が実証されたプログラミング教育を、ゲーム制作を通じて楽しく体験できます。
▶ ぼうけんを はじめる 無料体験会に申し込む!6. 参考文献
この論文の詳細について興味がある方は、以下の参考文献をご覧ください。
- Nannim, F.A., Mosia, M., Ezema, M.E., & Egara, F. (2026). Exploring the relationship between computational thinking dimensions and achievement in robotics programming among computer education students. Journal of Technology and Science Education, 16(1), 95-108. https://doi.org/10.3926/jotse.3402
- Wing, J.M. (2006). Computational thinking. Communications of the ACM, 49(3), 33-35. https://doi.org/10.1145/1118178.1118215
- Tsai, M. J., Liang, J. C., & Hsu, C. Y. (2021). The computational thinking scale for computer literacy education. Journal of Educational Computing Research, 59(4), 579-602. https://doi.org/10.1177/0735633120972356
- Román-González, M., Pérez-González, J.C., & Jiménez-Fernández, C. (2017). Which cognitive abilities underlie computational thinking? Criterion validity of the Computational Thinking Test. Computers in Human Behavior, 72, 678-691. https://doi.org/10.1016/j.chb.2016.08.047
- Grover, S., & Pea, R. (2018). Computational thinking: A competency whose time has come. Computer science education: Perspectives on teaching and learning in school, 19(1), 19-38.
- Brennan, K., & Resnick, M. (2012). New frameworks for studying and assessing the development of computational thinking. In Proceedings of the 2012 annual meeting of the American educational research association, Vancouver, Canada (1, 25).
- Shute, V.J., Sun, C., & Asbell-Clarke, J. (2017). Demystifying computational thinking. Educational research review, 22, 142-158. https://doi.org/10.1016/j.edurev.2017.09.003
- Lye, S.Y., & Koh, J.H.L. (2014). Review on teaching and learning of computational thinking through programming: What is next for K-12? Computers in Human Behavior, 41, 51-61. https://doi.org/10.1016/j.chb.2014.09.012
- Weintrop, D., Beheshti, E., Horn, M., Orton, K., Jona, K., Trouille, L. et al. (2016). Defining computational thinking for mathematics and science classrooms. Journal of science education and technology, 25, 127-147. https://doi.org/10.1007/s10956-015-9581-5