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堺市で運営しているプログラミングスクールADVANCEの教室の様子

小学校プログラミング教育におけるトランスプログラミング:AI時代のトランスランゲージング再考

📌 この記事の結論

  • AI時代において、プログラミング教育で教師が生徒の多言語的・多様式的レパートリーを最大限に活用することは非常に重要です。
  • 本研究は、この実践を捉えるための新しい概念「トランスプログラミング」を提案しています。これは、従来の「トランスランゲージング」の概念をプログラミング教育の文脈に拡張したものです。
  • 教師は仮説的シナリオや段階的な指導を通じて、生徒のプログラミング概念理解とデバッグスキルの育成を促進します。
  • 教師の教育実践は、過去の経験と教育的信念に深く影響されており、これらが多言語・多様式リソースの活用方法を決定づけます。

1. AI時代におけるプログラミング教育の重要性と課題

現在のAI時代において、プログラミングとコーディングは、絶えず変化する技術的状況を乗りこなすために不可欠なスキルとなっています。テクノロジーが私たちの生活の様々な側面にますます影響を与える中で、プログラミング言語を理解し、それと対話する能力はより大きな重要性を増しています。

しかし、教師や生徒の言語的・多様式的レパートリーがプログラミング教育を促進する上でどのような役割を果たすかについては、限られた研究しかありません。本論文は、香港の小学校における情報技術教師が、多様な言語的、記号的、技術的リソースをどのように活用して生徒にプログラミングを教えているかを調査することを目的としています。

この研究は、「トランスプログラミング」という概念を導入し、プログラミング言語と計算表現が分離されたものではなく、より大きな言語的・記号的環境の構成要素であることを認識しています。この概念は、教師が教室で多様な知識基盤を取り入れ、プログラミング活動を通じて生徒のプログラミングコードの表現を構築し理解する能力を高めることの重要性を強調しています。

2. 紹介する論文の概要

📄 論文情報

タイトル Transprogramming in the primary-level programming lessons: reconceptualizing translanguaging in the era of artificial intelligence
著者 Kevin W.H. Tai
掲載誌 Applied Linguistics, 2026, 47, 93–126
研究対象 香港の小学校のIT教師1名とその5年生の生徒たち(10~11歳、広東語が第一言語)
研究期間 非公開(Advance access publication 2024年12月11日)

研究の目的

本研究は、香港の小学校のIT教師が、生徒のプログラミングタスク遂行プロセスを促進するために、多様な言語的、記号的、プログラミングリソースをどのように組み合わせているかを探ることを目的としています。また、言語理論としてのトランスランゲージングの概念を拡張する「トランスプログラミング」という概念を提案しています。

研究の方法

研究データは、香港の小学校における情報技術教室での集中的な観察から収集されました。具体的には以下の3つの方法でデータを収集し、分析を行いました。

  1. 研究協力教師との事前インタビュー(1時間)
  2. 教室での授業インタラクションのビデオ記録(30分×3回のITレッスン)
  3. 教師とのビデオ刺激想起インタビュー(1時間)

教室データはマルチモーダル会話分析(MCA)を用いて分析され、ビデオ刺激想起インタビューは解釈的現象学的分析(IPA)を用いて分析され、これらによってデータが三角測量されました。

プログラミングソフトウェアには、ブロックベースのプログラミングプラットフォームであるMIT App Inventorが使用されました。このツールは、初心者でもモバイルアプリを開発でき、計算論的思考を教えるためのリソースとして活用されています。

3. 研究結果のポイント3つ

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この研究の主な発見は、教師がプログラミングタスクに従事する際に、多言語的、多様式的、プログラミング的な様々なリソースを活用して生徒のスキルを向上させていることを示しています。以下にそのポイントをまとめます。

✅ ポイント1:仮説的シナリオを活用したプログラミング概念の導入

教師は、メモ用紙やラッキードロー(くじ引き)の例といった多種多様なリソースを戦略的に使用し、「リスト」や「乱数」といったプログラミングの専門用語を生徒に教えていました。例えば、5つのメモ用紙に1から5の数字を書き、「リスト」として視覚化し、くじ引きのシナリオを通じて「乱数」の概念を説明しました。

この際、教師は母語である広東語と第二言語である英語(例:「Random no.」や「list」)をシームレスに切り替えていました。これにより、生徒はブロックエディタの機能や「新しい単語ボタン」の役割を、馴染みのある日常体験と結びつけて理解することができました。

✅ ポイント2:デバッグスキル育成のための段階的指導

教師は、間違ったコードが示されたスクリーンを提示し、インタラクティブな質問とジェスチャーを通じて生徒にコードのエラー特定を促しました。生徒たちは互いに協力し、「背景色」のオプションが「文字」の生成には適さないといった具体的なエラーを特定し、解決策を提示しました。

教師は「de咗bug」(「デバッグした」の意、広東語と英語の混合)という表現を用いるなど、多言語的なリソースを巧みに使いながら「デバッグ」という技術用語を導入し、その重要性を強調しました。この段階的なアプローチは、生徒の批判的思考と問題解決能力を育む上で効果的であることが示されています。

✅ ポイント3:教師の教育実践を形成する経験と信念

教師の「トランスランゲージング」実践は、彼女の過去の指導経験と教育的信念に深く影響されていました。例えば、じゃんけんの例を用いるアイデアは、以前にピンポン玉やアイスクリームの棒を使った経験から派生したものです。

また、プログラミングの専門用語を英語で導入する動機は、生徒が将来的にプログラミングの学習や国際的なリソースにアクセスするために英語が不可欠であるという信念に基づいています。さらに、デバッグスキルの育成に重点を置くのは、単なる手順の追従を超え、批判的思考と問題解決能力を育むという教師の教育哲学が反映されています。

4. ADVANCEの現場から見た実感

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▲ ADVANCEの教室で学ぶ様子(イメージ)

堺市南区のプログラミングスクールADVANCEで実際にプログラミングを教えている講師としての意見は以下の三つです

🎮 現場で感じる3つの変化

言葉の壁を越えた理解の深化

この論文が示すように、ADVANCEでも、日本語とプログラミング言語(英語ベース)を組み合わせることで、生徒はより直感的に概念を捉えます。例えば、UnityのC#で変数を学ぶ際、「integer(整数)」という英語と日本語の「整数」を併用し、実際のゲーム内での数値の変化を見せることで、多角的な理解を促進しています。

ゲームを通じたデバッグの重要性

生徒がScratchやRoblox Studioでゲームを作成する際、必ずエラーに直面します。この論文にあるように、エラーを「見つける」「修正する」プロセス自体が、最も重要な学習体験です。ADVANCEでは、このデバッグの過程を講師が一方的に教えるのではなく、「どうすれば動くかな?」「どこがおかしいと思う?」と問いかけ、生徒自身に考えさせることを重視しています。

創造性と問題解決能力の向上

「トランスプログラミング」の概念は、私たちが目指す「計算論的思考」の育成と深く結びついています。単にコードを書くだけでなく、多様な思考リソース(母語、視覚、論理)を統合して問題を解決する能力は、ゲーム制作という創造的な活動を通じて最もよく育まれると実感しています。

ADVANCEでは、「トランスプログラミング」的なアプローチを自然に取り入れています。例えば、Roblox StudioでLua言語を使ってプログラミングをする際、生徒が日本語で思考した内容を、講師がLuaのコード構造や英語の関数名に「変換」し、その過程で生徒は多角的な視点からプログラミングを理解していきます。これは、プログラミングスキルだけでなく、言語と思考の柔軟性も同時に育むことにつながると考えています。

5. 保護者の方へ:家庭でできること

プログラミング教育は教室の中だけで完結するものではありません。ご家庭でのちょっとした働きかけが、お子さんのプログラミング的思考力や問題解決能力を大きく伸ばすことにつながります。この研究結果を踏まえ、保護者の方々が家庭でできることを3つのポイントでご紹介します。

🏠

日常生活で「リスト」や「手順」について話す

買い物リストや料理のレシピ、朝の準備の順番など、日常生活のあらゆる場面で「リスト」や「順番に実行すること」についてお子さんと話してみましょう。これはプログラミングにおける「配列(リスト)」や「アルゴリズム(手順)」の基礎となります。「どの順番で進めるのが効率的かな?」といった問いかけも効果的です。

📅

エラーを恐れず、「なぜ?」を一緒に考える

お子さんが何か失敗したり、おもちゃがうまく動かなかったりした時に、すぐに解決策を与えるのではなく、「どこが悪かったのかな?」「どうすればうまくいくと思う?」と尋ね、一緒に原因を探る姿勢を促しましょう。これはプログラミングの「デバッグ」能力に直結し、試行錯誤を通じて問題解決する力を育みます。

👏

創造的な表現を奨励する

絵を描いたり、物語を作ったり、レゴブロックで何かを組み立てたりする中で、お子さんがどのように「アイデア」を表現しているかに注目し、それをさらに発展させるように促しましょう。プログラミングもまた、アイデアを形にする創造的な手段の一つです。お子さんの「こうしたい!」という気持ちを大切にし、多様な表現方法を応援してください。

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堺市南区のプログラミングスクールADVANCEでは、Scratchからはじめて、Roblox、Unity(C#)まで段階的に学べます。

研究で効果が実証されたプログラミング教育を、ゲーム制作を通じて楽しく体験できます。

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6. 参考文献

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この記事を書いた人

ADVANCE 講師

堺市南区のプログラミングスクールADVANCEで、Scratch・Roblox・Unity等を用いたプログラミング教育を担当。子どもから大人まで幅広い年齢層への指導経験を持つ。