中川駿監督が語る『90メートル』誕生秘話 母への深い愛情と大森元貴の主題歌への感謝
中川駿監督の最新作『90メートル』が3月27日に公開を迎え、3月5日にユーロライブで行われたトークイベントで、監督が作品に込めた想いを熱く語りました。上映後の会場は感動に包まれ、観客から次々と質問が飛び交うなど、大盛況のうちに幕を閉じました。
半自伝的映画『90メートル』とは?
本作は、人生の岐路に立つ高校生と、難病を抱えながらも息子を支え続けるシングルマザーの揺るぎない愛情を描いた作品です。スタジオジブリ『君たちはどう生きるか』で声優を務めた山時聡真が主人公の佑を演じ、菅野美穂が母の美咲役を担っています。中川監督は、自身の経験を基に、ヤングケアラーという社会問題に光を当てながらも、親子の愛情物語として観客に届けたいと語りました。
監督が語る制作秘話と母への想い
中川監督は「この作品は、僕の母と僕自身がモデル」と明言。数年前に母を亡くした自身の経験から、介護を通して見えてきた親子の関係性や、介護を支える人々の温かさを描きたいと考えたそうです。「あくまで親の子離れの話であり、子の母離れの話にしたかった」と語り、観客が自分ごととして共感できるような作品を目指したことを明かしました。
介護施設のケアマネジャーやヘルパーなど、介護に携わる人々の描写にも力を入れており、「彼らの存在がとても頼もしかった。感謝してもしきれないくらい、大きな温かいものをいただいた」と感謝の思いを述べました。彼らの仕事を知ってもらうことで、社会全体で介護を支える意識を高めたいという想いも語られました。
そして、何よりも大きな軸となっているのが「母への感謝」です。「僕は、母から大きな愛をもらった。愛をいただいたことに対する感謝、尊敬の気持ちを伝えきれないまま、母は亡くなってしまった。その想いをこの作品を通じて、昇華したいなという気持ちがあった」と、監督の言葉には深い愛情が込められていました。
大森元貴の主題歌「0.2mm」への感謝
劇中を彩る主題歌は、大森元貴(Mrs.GREENAPPLE)がソロ名義で初めて手掛けた「0.2mm」。中川監督は、大森元貴が作品を深く理解し、尊重してくれたことに感謝を述べました。「主題歌も含めて作品の一部。大森さんが映画に寄り添ってくださって、出来上がった曲」と、作品の世界観に寄り添った楽曲に深い満足感を示しました。
観客との交流から見えた作品の可能性
イベントでは、観客からの質問にも丁寧に答える中川監督。介護サービスを利用した経験のある人や、ケアマネジャーとして働く人など、様々な立場の人々から感想や質問が寄せられました。監督は、「ヤングケアラーやご家庭のなかで大変な経験をされている方は、どうしても自分がいま見ている世界が全部だと思ってしまいがち。だからこそ諦めてしまったり、絶望感のなかで閉鎖的になってしまいがちだと思う。でも世界は広いし、絶対に手を差し伸べてくれる人はいるし、差し伸べられた手を掴むことは恥ずかしいことでもなんでもない。それを伝えたい」と、作品に込めたメッセージを改めて強調しました。
『90メートル』は、社会問題を扱いながらも、普遍的な家族の愛を描いた感動的な作品です。公開に向けて、中川監督は「ヤングケアラーや病気を扱った作品は、どうしても重たい、暗い、観るのがしんどそうだと警戒されがちなもので。今日、観終わった時の感情は、重たい、暗い、しんどいというものとはちょっと違うものだったのかなと思っています」と、観客に作品を体験してほしいと呼びかけました。