能登地震で露呈した“排泄問題”:震災から15年、教訓は活かされたのか?
2024年の能登半島地震で、避難生活で最も困ったこととして「トイレ」を挙げた人が69.8%に上ることが、日本トイレ研究所の調査で明らかになりました。食事や睡眠への不満を大きく上回るこの結果は、東日本大震災から15年経った今も、震災時のトイレ問題が根本的に解決されていないことを示唆しています。
東日本大震災で明らかになったトイレの悲惨な実態
2011年の東日本大震災では、ライフラインの途絶により水洗トイレが機能しなくなり、あっという間に汚物であふれかえる凄惨な状況となりました。断水や停電に加え、給排水管や汚水処理施設自体も被災し、状況は深刻を極めました。
名古屋大学エコトピア科学研究所・岡山朋子氏の調査によると、仮設トイレが3日以内に設置された自治体はわずか34%。14%の自治体では設置に1か月以上を要しました。仮設トイレが届いたとしても、数が限られているため、バキュームによる汲み取りが追いつかず、使用中止になるという悪循環が続きました。
仮設トイレが到着するまでの間、地面に穴を掘り、木の板を渡して周囲をすだれやブルーシートで囲っただけの「素掘りトイレ」でしのいだ場所もありました。排泄は生理現象であり、待ったなしの状況でしたが、劣悪な環境のトイレを使いたくないという思いから、水分摂取を極限まで控えたり、排泄を我慢したりする人が続出し、体調不良や感染症を引き起こす原因となりました。
和式トイレの構造的な問題と高齢化社会への対応の遅れ
当時の学校や避難所に多かった和式トイレも大きな壁となりました。足腰の弱い高齢者や障害者のために急きょ椅子を取り付けて「洋式化」を図ったものの、トイレのドアが内開きだったために、設置した椅子が邪魔でドアが閉まらないといった、構造上の問題も浮き彫りになりました。
震災翌日には厚生労働省から自治体へ、高齢者や障害者向けの洋式仮設トイレの設置を促す事務連絡が出されましたが、現実の供給体制がその要請に追いつくことはありませんでした。
能登地震でも繰り返されたトイレ問題
能登地震においても、道路の寸断などにより仮設トイレが3日以内に設置できた避難所はわずか10%でした。設置された仮設トイレの85%が和式であり、高齢化が進む地域のニーズと大きく乖離していました。
十分な手洗いができない環境下では、さまざまな感染症を引き起こすリスクが高まります。トイレ問題は、単なる生活の不便さを超え、命に関わる問題なのです。
過去の震災の教訓を活かし、迅速な仮設トイレの設置、洋式トイレの拡充、衛生管理の徹底など、抜本的な対策が求められています。