記録的酷暑の欧州でエアコンが普及しない理由は?「ぜいたく品」から「必需品」へ変わる意識
なぜ欧州のエアコン普及率はわずか20%なのか?
近年、記録的な熱波に何度も見舞われている欧州ですが、住宅のエアコン普及率は米国が90%なのに対し、欧州ではわずか20%程度にとどまっています。なぜ、これほどまでに暑いのにエアコンを導入しないのでしょうか。その大きな理由は、欧州にとって「冷房は歴史的に必要のないもの」だったからです。北欧をはじめとする多くの地域では、これまで夏に長時間暑くなることは極めてまれでした。そのため、エアコンは必需品ではなく、「ぜいたく品」として扱われてきた歴史があるのです。
古い街並みと「建築上の制約」がエアコン導入を阻む
建物そのものの構造もエアコン普及を難しくしています。欧州には歴史的な古い建物が多く、特に英国では1900年以前に建てられた住宅が全体の約17%を占めます。こうした古い建築物に最新のセントラル冷房を設置することは物理的に難しいだけでなく、景観保全の観点から自治体が室外機の設置を許可しないケースも多々あります。また、南欧の古い建物はもともと厚い壁や小さな窓で熱を遮断する設計になっており、エアコンに頼らなくても涼しさを保てる知恵が息づいていることも、普及が進まない理由の一つです。
環境負荷への懸念と変わりつつあるライフスタイル
欧州が掲げる「2050年までの気候中立」という目標も、エアコン導入を慎重にさせている要因です。エアコンは多くのエネルギーを消費するだけでなく、室外機から排出される熱が屋外の気温をさらに上昇させ、都市部の「ヒートアイランド現象」を悪化させます。しかし、他地域よりも2倍のペースで温暖化が進む欧州において、人々の意識は確実に変化しています。国際エネルギー機関(IEA)によると、EU域内のエアコン設置台数は2050年までに現在の2倍以上になる見込みです。今後は、環境負荷を抑えつつ、命を守るための「新しい冷房のあり方」が欧州でも求められていくでしょう。