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自己調整型プログラミング学習のホリスティックモデルに向けて:アル・ガザーリーの自己反省概念の統合

📌 この記事の結論

  • 初心者プログラマーの学習には、単なるタスク完了以上の深い「自己反省」が不可欠。
  • 従来の自己反省アプローチは「認知的な側面」に偏りがちで、「倫理的・道徳的な側面」が不足している。
  • イスラムの哲学者アル・ガザーリーの「タファックル(深い内省)」、「ムハサバ(自己説明責任)」、「アダブ(倫理的行動)」の概念を統合することで、より「ホリスティックな自己調整型学習モデル」が構築できる。
  • この統合は、プログラミング学習における「自己評価の質」を高め、概念理解を深め、協調的な学習環境での「倫理的な関与」を促進する。

1. アル・ガザーリーの哲学がプログラミング学習に与える影響とは?

プログラミング教育は、コンピューティング教育の中でも特に難しい分野の一つとして広く認識されています。初心者プログラマーは、問題解決スキル、事前知識、プログラミングプロセス、そして個人の学習特性など、様々な課題に直面し、これらが効果的な学習能力に影響を及ぼす可能性があります。

プログラミングで成功するためには、技術的な知識だけでなく、学習を計画し、監視し、評価し、戦略を適応させる能力、つまり自己調整学習(SRL)が求められます。SRL戦略を効果的に活用できる学生は、プログラミングの困難を乗り越え、粘り強く学習を続け、より良い学習成果を達成できることが示されています。

このSRLの枠組みの中で、自己反省は極めて重要な役割を果たします。自己反省によって、学習者は自身のパフォーマンスを評価し、推論の誤りを特定し、将来のタスクのための戦略を調整することができます。しかし、多くの研究が示しているように、初心者プログラマーはしばしば表面的な反省に留まり、コードが正しく動作するかどうかに焦点を当て、その背後にある思考プロセスや学習プロセスを深く検討しません。

このような現状から、本論文では、現代のプログラミング教育における自己反省の質を高めるため、イスラム哲学者のイマーム・アブー・ハミド・アル・ガザーリー(1058–1111 CE)の概念を統合する可能性を探ります。特に、アル・ガザーリーのタファックル(深い内省)、ムハサバ(自己説明責任)、アダブ(倫理的行動)の概念が、ジンマーマンの自己調整学習モデルにおける自己反省段階をどのように豊かにし、よりホリスティックなプログラミング学習モデルに貢献し得るかを考察します。

2. 紹介する論文の概要

📄 論文情報

タイトル Towards a Holistic Self-Regulated Programming Learning Model: Integrating Al-Ghazali's Concept of Self-Reflection (自己調整型プログラミング学習のホリスティックモデルに向けて:アル・ガザーリーの自己反省概念の統合)
著者 Siti Noor Ahmad, Juzlinda Mohd Ghazali, Syarbaini Ahmad, Adidah Larjis
掲載誌 e-JURNAL PENYELIDIKAN DAN INOVASI ISLAMIC INNOVATION CENTER FOR TECHNOLOGY, UIS, VOL. 13 NO. 2 (AUGUST, 2026)
研究対象 初心者プログラマーの自己調整学習における自己反省
研究期間 本研究は概念論文であり、特定の研究期間は設定されていませんが、2026年8月に発表されました。

研究の目的

本論文は、プログラミング教育の文脈において、アル・ガザーリーの自己反省に関する概念(タファックル、ムハサバ、アダブ)を、ジンマーマンの自己調整学習(SRL)モデルにおける自己反省段階に理論的に統合する可能性と根拠を探求することを目的としています。

具体的には、以下の3点に貢献します。

  1. アル・ガザーリーの概念とジンマーマンの自己反省段階との主要な収束点を特定し、明確にすること。
  2. アル・ガザーリーの概念が、プログラミング教育における自己反省の現代的理解をどのように豊かにするかを強調すること。
  3. 将来の経験的研究とモデル検証のための方向性を示すこと。

研究の方法

本研究は、概念論文アプローチを採用しています。これは、一次データ収集ではなく、既存の文献を統合・分析することで、新しい視点を開発し、理論間の関係を明確にし、理論的命題を生成するものです。具体的な方法は以下の通りです。

  1. 文献検索と選定: ScopusとGoogle Scholarを使用し、「自己調整学習」、「プログラミング教育」、「自己反省」、「ジンマーマン」、「アル・ガザーリー」、「タファックル」、「ムハサバ」、「アダブ」などのキーワードで関連文献を検索しました。合計17の主要参考文献(SRLとプログラミング教育に関する6件、アル・ガザーリーの教育思想に関する9件、反省的実践に関する2件)が分析のために選定されました。

  2. ジンマーマンのSRLモデルの分析: ジンマーマンの自己調整学習フレームワークにおける自己反省の主要な概念と要素を、関連文献から特定し、統合しました。

  3. アル・ガザーリーの概念の分析: アル・ガザーリーの概念であるタファックル、ムハサバ、アダブを、それらの教育的な意味と反省的学習への影響を判断するために詳細に検討しました。

  4. 比較概念分析: 上記の2つの視点(ジンマーマンのSRLとアル・ガザーリーの哲学)間の収束点を特定するために、比較概念分析を実施しました。これにより、アル・ガザーリーの概念がプログラミング教育における自己反省の現代的理解をどのように豊かにするかについての理論的説明を開発しました。

3. 研究結果のポイント3つ

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ジンマーマンの自己調整学習(SRL)における自己反省段階と、アル・ガザーリーの教育哲学(タファックル、ムハサバ、アダブ)を比較分析した結果、両者の間に3つの重要な収束点が明らかになりました。これは、異なる教育的伝統が、意味のある自己反省という共通の理解を共有していることを示唆しています。

✅ ポイント1:誠実な自己評価の促進

ジンマーマンの「自己判断」は、学習者が自身のパフォーマンスを客観的な基準と照らし合わせ、成功または失敗の原因を特定することを促します。これに対し、アル・ガザーリーの「ムハサバ(自己説明責任)」は、自身の努力や行動を誠実に検討することを強調します。どちらの視点も、学習経験に対する正直な反省が、真の改善の出発点であることを示しています。

プログラミング教育では、例えばPythonでコードを記述した後、単に「エラーが出たか出なかったか」だけでなく、「なぜこのエラーが出たのか?」「どのようにすればもっと効率的なコードが書けたか?」といった深い自己評価を促すことで、プログラムの出力結果だけでなく、その背後にある理解度を批判的に評価する習慣を養います。

✅ ポイント2:概念理解を深める深い反省

ジンマーマンの「適応的推論」は、過去の経験から教訓を導き出し、将来の学習に活用することを奨励します。これと類似して、アル・ガザーリーの「タファックル(深い内省)」は、表面的な評価を超え、深い熟考と理解を促進します。

例えば、JavaScriptで特定のWebアプリケーション機能を実装した際、「動いたからOK」で終わるのではなく、「なぜこのコードで動くのか」「より汎用的なアプローチは何か」「この解決策から他のどのような問題に応用できるか」といった問いを通じて、深い概念的理解と、意味のある学習を促します。

✅ ポイント3:倫理的な学習とフィードバックの活用

ジンマーマンのフレームワークは、教師や仲間からのフィードバックを自己評価の重要な入力と位置づけます。これに対し、アル・ガザーリーの「アダブ(倫理的行動)」は、謙虚さ、尊敬、誠実さ、開放性といった倫理的基盤を提供し、フィードバックを受け取り、他者と相互作用する際の態度を形成します。

プログラミング教育におけるペアプログラミングやコードレビューのような共同作業では、このアダブの精神が重要です。例えば、他の生徒が書いたUnityのC#スクリプトをレビューする際、単に間違いを指摘するだけでなく、相手の努力を尊重し、建設的な提案を行うことで、反省の質と学習経験の両方を向上させることができます。

4. ADVANCEの現場から見た実感

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▲ ADVANCEの教室で学ぶ様子(イメージ)

堺市南区のプログラミングスクールADVANCEで実際にプログラミングを教えている講師としての意見は以下の三つです

🎮 現場で感じる3つの変化

思考の「なぜ?」を深掘りする重要性

ADVANCEでは、Scratchでゲームを作る際に、単にブロックを繋げて動かすだけでなく、「なぜこのブロックを使うとこうなるのか?」「もっと効率的にするにはどうすればいいか?」といった「なぜ?」という問いを常に投げかけています。これは、論文でいう「タファックル(深い内省)」に繋がり、子供たちが表面的な操作だけでなく、その裏にあるプログラミングの概念を深く理解する上で不可欠だと実感しています。

仲間との学びで高まる責任感と倫理観

Roblox StudioやUnityを使ったゲーム制作では、グループで協力して一つのプロジェクトを進めることがあります。この時、自分の担当部分だけでなく、チーム全体への貢献や、他のメンバーの意見を尊重する姿勢が求められます。これは「アダブ(倫理的行動)」の概念と重なり、子供たちが単なる技術習得を超え、協調性や責任感を育む良い機会となっています。

失敗から学ぶ「自己改善のサイクル」の確立

プログラミング学習においてエラーはつきものです。しかし、ADVANCEの生徒たちは、エラーが出たときにただ諦めるのではなく、「どこが間違っていたのか?」「どうすれば解決できるか?」と自ら分析し、試行錯誤するよう促されます。これは「ムハサバ(自己説明責任)」の考え方に近く、失敗を恐れずに挑戦し、そこから学び、改善していくという自己調整学習のサイクルを自然と身につけているように感じます。

ADVANCEでは、これらの要素をカリキュラムや指導法に取り入れることで、子供たちが単にコードを書けるようになるだけでなく、自律的に学び、成長し続ける「ホリスティックなプログラマー」へと育っていくことを目指しています。

5. 保護者の方へ:家庭でできること

お子様のプログラミング学習をより深く、意味のあるものにするために、ご家庭でも実践できることを3つご紹介します。

🏠

「なぜ?」を問いかけ、深く考える習慣を

お子様がプログラミングで何かを完成させたとき、「どうしてうまくいったの?」「もし違うやり方をしたらどうなると思う?」など、結果だけでなくプロセスや理由に焦点を当てた質問をしてみてください。これにより、表面的な理解に留まらず、「タファックル(深い内省)」のような深く考える習慣が育まれます。

📅

振り返りの時間を作り、自己評価を促す

週に一度など、定期的に「今週のプログラミング学習で一番難しかったことは?」「次に挑戦したいことは?」といった質問で、お子様自身に学習内容を振り返らせる時間を設けてみましょう。「ムハサバ(自己説明責任)」の精神に基づき、自分の学習を客観的に評価し、改善点を見つける力を養うことができます。

👏

失敗を恐れない姿勢を励まし、倫理的な学びをサポート

プログラミング学習ではエラーや失敗はつきものです。お子様が失敗した時こそ、「よく頑張ったね」「次にどうすればいいか一緒に考えよう」と励まし、建設的なアドバイスを与えてください。また、他の人の作品を評価する際には、「どこが良いか」「どうすればもっと良くなるか」といった敬意のこもったフィードバックを促しましょう。「アダブ(倫理的行動)」は、失敗から学び、他者と協力して成長する上で不可欠な心の姿勢を育てます。

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6. 参考文献

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この記事を書いた人

ADVANCE 講師

堺市南区のプログラミングスクールADVANCEで、Scratch・Roblox・Unity等を用いたプログラミング教育を担当。子どもから大人まで幅広い年齢層への指導経験を持つ。