Scratchとai Explore!ゲームを用いた早期プログラミング教育におけるゲーム開発型学習の効果
📌 この記事の結論
- 小学4年生を対象に、ゲーム開発型学習(GDBL)が従来の指導法よりもプログラミング習得度を向上させる可能性が示されました。
- GDBLでは、単一のゲームを段階的に開発することで、プログラミング概念の学習をサポートします。
- 教師の観察では、GDBLが生徒の関心とエンゲージメントを高め、抽象的な概念の理解を助けることが示唆されました。
1. プログラミング教育の未来を拓く:ゲーム開発型学習の可能性
デジタル化が進む現代社会において、早期のプログラミング教育は非常に重要です。STEM教育やコーディングプログラムに参加した子どもは、学業成績が向上し、将来的にSTEM分野に進む可能性が高いことが示されています(Allen et al., 2019; Grover & Pea, 2013)。
しかし、若い学習者にとってプログラミングは抽象的で、モチベーションの維持が難しいという課題があります。この課題を解決するための一つの効果的なアプローチが、ゲーム開発型学習(GDBL)です。
本研究は、Scratchとai Explore!ゲームを用いた構造化されたGDBLアプローチが、従来の指導法と比較して、小学4年生のプログラミング習得度にどのような影響を与えるかを調査したものです。
2. 紹介する論文の概要
📄 論文情報
| タイトル | Game Development-Based Learning for Early Programming Education Using Scratch and the ai Explore! Game |
|---|---|
| 著者 | Vedrana Mikuli´c Crnkovi´c 1,* , Bojan Crnkovi´c 1, Martina Holenko Dlab 2 and Ivona Traunkar 1 |
| 掲載誌 | Educ. Sci. 2026, 16, 1641 (MDPI) |
| 研究対象 | クロアチアの小学校4年生104名(9〜10歳)。実験群2クラス44名、対照群3クラス60名。 |
| 研究期間 | 2024/2025学年度の春学期に7週間(合計13授業時間)。 |
研究の目的
本研究の目的は、構造化されたゲーム開発型学習(GDBL)アプローチに参加した小学4年生と、従来のプログラミング指導を受けた生徒のプログラミング習得度を比較することでした。特に、ai explore!ゲームから派生した単一の最適化ベースの問題文脈を通じて、Scratchでのプログラミング概念の段階的導入を支援する指導アプローチに焦点を当てています。
研究の方法
研究は、クロアチアの公立小学校の5つの小学4年生クラスを対象に実施されました。クラスは実験群と対照群にランダムに割り当てられ、全クラスは同じ教師によって指導されました。
- **参加者:** クロアチアの小学校5クラスの小学4年生104名(実験群2クラス、対照群3クラス)が参加しました。全クラスは同じ教師によって指導されました。
- **介入:**
- 実験群: 7週間にわたり、ai explore!ゲームをベースとした8つの段階的に複雑なタスクを通じて、プレイ可能なゲームをScratchで開発しました。この過程で、シーケンス、繰り返し、条件分岐、変数、入力処理といったプログラミング概念が段階的に導入されました。
- 対照群: 教科書の例題や課題を用いた従来のプログラミング指導を受けました。
- **評価:** 介入前には基準となるプログラミング知識を測る事前テスト、介入後には主要な成果指標として事後テストが実施されました。
- **分析:** 主要な分析は、クラス単位の割り当てを考慮したクラスレベルの厳密なランダム化テストで行われました。また、学生レベルのマン・ホイットニーU検定も補助的に実施されました。
3. 研究結果のポイント3つ
本研究の結果は、ゲーム開発型学習(GDBL)が早期プログラミング教育において効果的なアプローチである可能性を示唆しています。
✅ ポイント1:GDBLクラスのプログラミング習得度が高い傾向
事後評価において、ゲーム開発型学習(GDBL)を受けた実験群の平均スコアは0.769、従来の指導を受けた対照群は0.634でした。これは、GDBLクラスがより高いプログラミング習得度を示した記述的なパターンです。
ただし、クラスレベルの厳密なランダム化テストでは、統計的な有意差は限定的でした(p=0.20)。これは、少数のクラス(5クラス)という研究デザインに起因する推論上の限界があるため、慎重な解釈が必要です。
✅ ポイント2:単一のゲーム開発を通じた学習の連続性
GDBL介入の鍵となったのは、単一の「ai explore!」ゲームを継続的に開発するというアプローチでした。この一貫した文脈により、生徒は新しく導入されるプログラミング概念(例えば、Scratchで条件分岐を使ってゲームの点数を計算するなど)を、以前に学んだこと(キャラクターの動きなど)と結びつけやすくなりました。
これは、構成主義的な学習観(Papert, 1980; Kafai & Burke, 2015)、つまり意味のある成果物を積極的に構築し、繰り返し洗練させることで知識が発展するという考え方と一致しています。
✅ ポイント3:教師が報告した生徒のエンゲージメントと抽象概念の理解の促進
教師の観察によると、活動開始時は生徒の関心は限定的でしたが、個々のプログラミングタスクが最終的にプレイ可能なゲームに繋がると認識するにつれて、生徒のエンゲージメントと関心が増加したと報告されています。
特に、変数(例えば、Scratchでキャラクターの体力やスコアを記録する)のような抽象的なプログラミング概念の理解において、ゲーム開発活動が役立ったと述べられています。これは、即座の視覚的フィードバックや能動的な実験が、学習を促進した可能性を示唆しています。
4. ADVANCEの現場から見た実感
堺市南区のプログラミングスクールADVANCEで実際にプログラミングを教えている講師としての意見は以下の三つです
🎮 現場で感じる3つの変化
子供たちの「もっと知りたい!」という好奇心の爆発
私たちのスクールでも、子供たちは「ただ教えられる」よりも、「自分が作りたいもの」を形にするプロセスで圧倒的な集中力と好奇心を発揮します。Scratchで簡単なゲームを作り始めると、「このキャラクターをジャンプさせたい!」「もっとかっこいい効果音をつけたい!」といった内発的な動機が生まれ、自ら積極的に解決策を探し始めます。
抽象的な概念が「見える」具体的な体験に
論文でも指摘されているように、変数や条件分岐といった抽象的な概念は、特に小学生には理解が難しいものです。しかし、例えば「Roblox Studioでゲームのスコアを記録する変数」や「JavaScriptでHPが0になったらゲームオーバーにする条件分岐」のように、ゲームの中で具体的な役割を持たせることで、子供たちはその概念がどのように機能するのかを直感的に理解できるようになります。
失敗から学ぶ「試行錯誤の力」の育成
ゲーム開発では、思い通りに動かないことが日常茶飯事です。しかし、ADVANCEの生徒たちは、「どうすれば動くようになるだろう?」と積極的に考え、様々な方法を試します。これは、プログラミングだけでなく、あらゆる問題解決に必要な「試行錯誤の力」を自然と身につける絶好の機会となっています。私たちが提供するのは「答え」ではなく、「答えを見つけるためのヒント」です。
ADVANCEでは、論文で提唱されている「単一のゲームを段階的に開発する」というアプローチを、子どもたちが飽きずに楽しめるよう工夫しながら実践しています。この研究結果は、私たちの指導の有効性を裏付けるものであり、今後もGDBLを積極的に取り入れてまいります。
5. 保護者の方へ:家庭でできること
ご家庭でも、お子様のプログラミング学習をさらに充実させるためのヒントを3つご紹介します。
お子様の作品に興味を示す
お子様が作ったScratchのゲームや、教育版マインクラフトで作った建築物など、どんな小さな作品でも積極的に見て、褒めてあげてください。「これはどうやって作ったの?」「次はどんなものを作るの?」といった質問は、お子様のモチベーションを大きく高めます。
自由な発想を大切にする時間を作る
決まった課題に取り組むだけでなく、「今日はこれを作ってみよう!」と自由にアイデアを形にする時間を与えてみましょう。エラーが出ても、それが新しい発見に繋がることもあります。親御さんが一緒に試行錯誤する姿勢を見せるのも良い刺激になります。
失敗を恐れない環境を整える
プログラミングは「試して失敗し、修正する」の繰り返しです。エラーが出ても叱らず、「どうすれば解決できるかな?」と一緒に考える姿勢が大切です。失敗は学習の過程であり、乗り越えることで大きな成長に繋がります。
🎮 ADVANCEで一緒にプログラミングを始めませんか?
堺市南区のプログラミングスクールADVANCEでは、Scratchからはじめて、Roblox、Unity(C#)まで段階的に学べます。
研究で効果が実証されたプログラミング教育を、ゲーム制作を通じて楽しく体験できます。
▶ ぼうけんを はじめる 無料体験会に申し込む!6. 参考文献
- Allen, P. J., Chang, R., Gorrall, B. K., Waggenspack, L., Fukuda, E., Little, T. D., & Noam, G. G. (2019). From quality to outcomes: A national study of afterschool STEM programming. International Journal of STEM Education, 6, 37. [CrossRef]
- Crnkovi´c, B., Mikuli´c Crnkovi´c, V., & Traunkar, I. (2024). The exhibition, games and virtual reality—Technologies in math education. In T. Volari´c, B. Crnoki´c, & D. Vasi´c (Eds.), Digital transformation in education and artificial intelligence application. MoStart 2024. Communications in computer and information science (Vol. 2124). Springer. [CrossRef]
- Holenko Dlab, M., & Hoic-Bozic, N. (2021). Effectiveness of game development-based learning for acquiring programming skills in lower secondary education in croatia. Education and Information Technologies, 26(4), 4433–4456. [CrossRef] [PubMed]
- Kafai, Y. B., & Burke, Q. (2015). Constructionist gaming: Understanding the benefits of making games for learning. Educational Psychologist, 50(4), 313–334. [CrossRef] [PubMed]
- Mikuli´c Crnkovi´c, V., Crnkovi´c, B., Traunkar, I., & Holenko Dlab, M. (2024, October 3–4). [ai] Explore!: An educational game for developing programming skills and algorithmic thinking. Proceedings of the 18th European Conference on Games Based Learning (Vol. 18, pp. 623–633), Aarhus, Denmark. [CrossRef]
- Papert, S. (1980). Mindstorms: Children, computers, and powerful ideas. Basic Books. Available online: https://mindstorms.media.mit.edu/ (accessed on 26 September 2026).
- Mikuli´c Crnkovi´c, V., Crnkovi´c, B., Holenko Dlab, M., & Traunkar, I. (2026). Game Development-Based Learning for Early Programming Education Using Scratch and the [ai] Explore! Game. Educ. Sci., 16(10), 1641. [CrossRef]