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堺市で運営しているプログラミングスクールADVANCEの教室の様子

小学校技術教員養成におけるプログラミング経験の探求 | 教員養成者の視点

📌 この記事の結論

  • 小学校の技術教員養成における教員養成者のプログラミング経験は4つのカテゴリに分類されます。
  • プログラミングは単なるツールの使用から、複雑な技術システムや社会の一部として理解されるようになります。
  • 技術教育と教育技術の区別を明確にし、システム思考と計算論的思考を技術的知識に統合することが重要です。
  • 教員養成では、プログラミングを実社会の課題解決や倫理的考察と結びつけることが求められます。

1. はじめに

現代社会のデジタル化が進む中、スウェーデンでは2018年からプログラミングが学校の技術科目の不可欠な要素となりました。これに伴い、教員養成課程も、将来の教師がプログラミングを意味のある形で授業に組み込めるよう準備する必要が生じています。しかし、教員養成者が技術教員養成においてプログラミングをどのように理解しているかについての研究はこれまで不足していました。

本記事では、この課題に取り組んだ最新の研究論文「小学校技術教員養成における教員養成者のプログラミング経験の探求 (Perez, Svensson, & Hallström, 2025)」を解説します。この研究は、スウェーデンの教員養成者がプログラミングをどのように捉え、それが彼らの教育実践にどう影響しているかを詳細に分析しています。

プログラミング教育が導入されて数年が経ち、その質を高めるためには、教える側の理解度を深めることが不可欠です。本研究の知見は、教員養成課程の改善だけでなく、私たちプログラミングスクールADVANCEのような民間教育機関にとっても、より質の高い教育を提供するための重要な示唆を与えてくれます。

2. 紹介する論文の概要

📄 論文情報

タイトル Exploring teacher educators’ experience on programming in primary technology teacher education (小学校技術教員養成における教員養成者のプログラミング経験の探求)
著者 Anna Perez, Maria Svensson, Jonas Hallström
掲載誌 International Journal of Technology and Design Education (2025) 36:483–497
研究対象 スウェーデンの11の高等教育機関に所属する12名の技術教員養成者(小学校4~6年生向け)のプログラミングに関する経験
研究期間 データ収集: 2024年春 / 受理日: 2025年6月30日 / 公開日: 2025年7月31日

研究の目的

本研究の目的は、小学校技術教員養成における教員養成者のプログラミング経験について、より深い理解を得ることです。具体的には、「教員養成者は技術教育におけるプログラミングをどのような形で経験しているか?」という問いに答えることを目指しています。

研究の方法

本研究では、現象記述的アプローチ(Phenomenography)が採用されました。これは、人々が特定の現象をどのように経験し、理解するかの多様な方法を探求する質的な手法です。研究プロセスは以下の通りです。

  1. 参加者の選定: スウェーデンの11の高等教育機関から、小学校4~6年生向けの技術教育コースを教えている、または最近まで教えていた12名の技術教員養成者が選ばれました。
  2. データ収集: 各教員養成者に対して、Zoomで約50~60分の半構造化インタビューを実施しました。インタビュー前には、各自が授業で使っているプログラミングに関する教材例を検討するよう依頼され、それを出発点として話が進められました。
  3. データ分析: インタビュー記録を繰り返し読み込むことで、教員養成者のプログラミング経験における多様な表現を特定しました。経験の類似点と相違点から初期のカテゴリを形成し、最終的に4つの質的に異なるカテゴリと、それらを構成する3つの次元(技術的知識、システム思考、計算論的思考)を特定しました。これらのカテゴリは、含まれる側面の数と複雑さに基づいて階層的に整理されました。

3. 研究結果のポイント4つ

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本研究では、教員養成者が技術教育におけるプログラミングを経験する方法として、4つの質的に異なるカテゴリが特定されました。これらは、プログラミングに対する理解が単なるツールの使用から、より複雑な技術的・社会的システムの一部として捉えるものへと進展する様子を示しています。

✅ ポイント1:技術的ツールとしてのプログラミング

このカテゴリでは、プログラミングを特定の言語(例:Scratch)のスキルを習得し、ツールとして使用することに焦点を当てます。教員養成者は、生徒がアニメーションや物語を作成するためにScratchの機能や構文を学ぶことを重視します。しかし、プログラミング自体は技術的な知識やシステム全体との深い結びつきがなく、「教育技術(Educational Technology)」としての側面が強く現れます。

✅ ポイント2:制御のための技術的ツールとしてのプログラミング

プログラミングを人工物やシステムを制御する手段として捉える段階です。ここでは、ループ、入出力、論理といった基本的なプログラミング概念を用いて、センサー(例:温度センサー)の制御や、特定のアクション(例:LEDを点灯させる)を起こすことに関心が向けられます。この段階では、コンポーネント間の相互作用を通じて、システム思考の初期的な要素が含まれますが、最終的な成果物は科学的な文脈で活用されるなど、まだ他の文脈との関連性が強いです。

✅ ポイント3:問題解決のための技術的ツールとしてのプログラミング

このカテゴリでは、プログラミングが技術的な文脈における問題解決に統合されたものとして理解されます。ツールの使用自体よりも、問題を特定し、それを解決するためのプログラミングの役割が重視されます。例えば、「温室が暑くなりすぎる」という問題を解決するために、センサーとプログラミングを組み合わせて自動換気システムを構築するといった課題です。これは、計算論的思考における問題解決、抽象化、アルゴリズム思考を前面に出しており、プログラミングが「技術教育(Technology Education)」の一部として明確に位置づけられます。

✅ ポイント4:社会における技術的解決策の一部としてのプログラミング

最も高度なこのカテゴリでは、プログラミングを変化する社会における技術とプログラミングされたシステムの役割という、より広い視点から捉えます。ここでは、個々のツールや制御の問題を超えて、セキュリティ、倫理的影響、技術発展の社会的文脈などが議論されます。例えば、自動運転車のハッキング問題や、AIの進化が社会に与える影響など、プログラミングが組み込まれたシステムが社会全体に及ぼす影響を考察します。これは、プログラミングを全体的なシステム思考と、デジタル化された社会における技術的知識の不可欠な部分として理解するものです。

4. ADVANCEの現場から見た実感

堺市で運営しているプログラミングスクールADVANCEの教室の様子
▲ ADVANCEの教室で学ぶ様子(イメージ)

堺市南区のプログラミングスクールADVANCEで実際にプログラミングを教えている講師としての意見は以下の三つです

🎮 現場で感じる3つの変化

単なるツール操作から、目的意識を持った創造へ

Scratchや教育版マインクラフトから始める生徒は、最初はブロックを動かすこと自体を楽しんでいます。しかし、ゲーム制作などを通じて「こういう動きを作りたい!」という具体的な目標が生まれると、ただブロックを並べるだけでなく、効率的なアルゴリズムやシステム設計を自然と意識するようになります。これは、論文のカテゴリ1から2への移行を実感させます。

課題解決の手段としてのプログラミングの理解

生徒がRoblox Studioでゲーム制作をする際、「キャラクターが壁をすり抜けてしまう」「敵が意図しない動きをする」といった問題に直面することがよくあります。この時、私たちは生徒に「どうすればその問題を解決できるか、そのためにどんなコードを書くべきか」を一緒に考えさせます。これにより、プログラミングが単なる命令の羅列ではなく、具体的な問題を解決するための強力なツールであるという認識が深まります。これは論文のカテゴリ3で強調されている点と一致します。

社会とのつながりを意識する視点の芽生え

UnityやPythonといったより高度な言語を学ぶ生徒の中には、AIやデータ分析、ウェブサービスの仕組みに関心を持つ子もいます。「なぜLINEは世界中の人とつながれるのか?」「ゲームの不正を防ぐにはどうすればいいのか?」といった質問から、プログラミングが社会のシステム全体にどのように組み込まれているか、その倫理的・セキュリティ的側面まで議論が広がることもあります。これは論文のカテゴリ4が示す、プログラミングと社会のつながりを理解する視点と合致しています。

ADVANCEでは、生徒がプログラミングを単なる技術としてだけでなく、社会やシステムの一部として深く理解できるよう、実践的な課題とディスカッションを組み合わせて指導しています。

5. 保護者の方へ:家庭でできること

本研究は、プログラミング教育が単なるツールの操作に留まらず、システム思考や計算論的思考、そして社会とのつながりを育む重要性を強調しています。ご家庭でも、お子様がプログラミングをより深く理解し、実社会で役立つスキルとして身につけるためのサポートができます。

🏠

「なぜ?」を問いかける習慣をつけましょう

お子様がScratchでアニメーションを作成したり、教育版マインクラフトで建築したりする際、「どうしてこのブロックを選んだの?」「もし違う方法だったらどうなるかな?」と問いかけてみてください。これにより、論理的思考や問題解決のプロセスを意識するきっかけになります。

📅

身の回りの「仕組み」に目を向けさせましょう

自動ドアや信号機、家電製品など、身の回りにはプログラムで動くシステムがたくさんあります。「この機械はどうやって動いているんだろう?」「もしプログラムがなかったらどうなると思う?」といった会話を通じて、システム思考や技術と社会のつながりを自然と学ぶことができます。

👏

失敗を恐れず、試行錯誤を応援しましょう

プログラミングはエラーやバグとの戦いでもあります。お子様がコードが動かない、思い通りにならないと悩んでいる時、「どこが問題だと思う?」「一つずつ確認してみようか」と励まし、デバッグのプロセスを一緒に楽しんでください。「なぜ動かないのか」を考え、「どうすれば動くか」を試す経験は、計算論的思考の重要な要素を育みます。

🎮 ADVANCEで一緒にプログラミングを始めませんか?

堺市南区のプログラミングスクールADVANCEでは、Scratchからはじめて、Roblox、Unity(C#)まで段階的に学べます。

研究で効果が実証されたプログラミング教育を、ゲーム制作を通じて楽しく体験できます。

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6. 参考文献

  1. Perez, A., Svensson, M., & Hallström, J. (2025). Exploring teacher educators’ experience on programming in primary technology teacher education. International Journal of Technology and Design Education, 36, 483–497.
  2. Brennan, K., & Resnick, M. (2012). New frameworks for studying and assessing the development of computational thinking. In Proceedings of the 2012 annual meeting of the American educational research association, Vancouver, Canada.
  3. Denning, P. J., & Tedre, M. (2019). Computational Thinking. Cambridge, Massachusetts: MIT Press.
  4. Marton, F. (1981). Phenomenography—describing conceptions of the world around us. Instructional Science, 10(2), 177–200.
  5. Senge, P. M. (1990). The fifth discipline: The art and practice of the learning organization. Doubleday.
  6. Gero, A., Shekh-Abed, A., & Hazzan, O. (2021). Interrelations between systems thinking and abstract thinking: The case of high-school electronics students. European Journal of Engineering Education, 46(5), 735–749.
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この記事を書いた人

ADVANCE 講師

堺市南区のプログラミングスクールADVANCEで、Scratch・Roblox・Unity等を用いたプログラミング教育を担当。子どもから大人まで幅広い年齢層への指導経験を持つ。