技術職なのに営業の内示…断れる?「断れる異動」と「断れない異動」の境界線【社労士が解説】
会社から突然告げられる人事異動。断れるのか、それとも耐えるしかないのか…。今回は、技術職の人が営業部に異動を命じられたケースを例に、人事異動を拒否できるのか、法的ルールをわかりやすく解説します。
人事異動は会社の「絶対命令」?
人事異動は、働く場所や仕事内容、人間関係を大きく変える可能性のある人生の大きな転機です。会社側は「業務上の必要性」を理由に異動を命じますが、本当に会社が言えばすべて認めさせられるのでしょうか?
近年、人手不足やリスキリング推進、ハラスメント対策強化などを背景に、異動の理由はますます多様化しています。しかし、その内容によっては「やりすぎだ」とトラブルになるケースも少なくありません。
ケース1:技術職から営業への異動は拒否できる?
建設工具メーカーに勤める海野さん(40代・男性)は、10年以上修理・メンテナンスを担ってきた技術職のエース。しかし、後輩への指導をあまり行わなかったため、技術が属人化しているという課題がありました。
ある日、海野さんは上司から「新商品の販売拡大のため、営業部で力を発揮してほしい」と告げられます。しかし、海野さんは「10年以上技術職一筋でやってきたので、営業はできない」と異動を拒否しました。
この場合、海野さんが異動を拒否することは可能です。なぜなら、
- 本人の適性や希望を無視した異動である
- 技術職としての専門性を活かす機会を奪う可能性がある
- 異動によってキャリア形成に支障をきたす可能性がある
などが理由として挙げられます。会社は、これらの点を考慮し、異動の必要性を具体的に説明する必要があります。
「断れる異動」と「断れない異動」の境界線
人事異動は、原則として会社の人事権の範囲内とされています。しかし、以下の場合は異動を拒否できる可能性があります。
- 就業規則に違反している場合
- 労働条件の著しい悪化を伴う場合(給与ダウン、勤務地の大幅な変更など)
- ハラスメントや不当な差別を目的とした異動である場合
- 本人の適性や能力を著しく無視した異動である場合
一方で、
- 業務上の必要性があり、合理的な理由が説明されている場合
- 会社の経営状況が悪化し、人員配置の調整が必要な場合
- 本人のキャリアアップにつながる可能性がある場合
などは、異動を拒否することが難しいケースです。
異動を拒否する場合の注意点
異動を拒否する場合は、以下の点に注意しましょう。
- 異動命令の内容をしっかりと確認する
- 拒否の理由を明確にする
- 会社と誠意をもって交渉する
- 必要に応じて社労士などの専門家に相談する
異動を巡るトラブルは、放置すると深刻化する可能性があります。早めに専門家に相談し、適切な対応をとることが重要です。