「水を飲まずに学校へ」…リクシルが1億人に届けた5ドルのトイレが変える世界
3月22日の「世界水の日」は、SDGs(持続可能な開発目標)の目標6「安全な水とトイレを世界中に」達成に向け、具体的なアクションを呼びかける日です。しかし、世界には「トイレに行きたいけれど、行けない」という状況が日常的に存在する地域があることをご存知でしょうか?
女子生徒たちの切実な現実
インドやバングラデシュなどの農村部では、学校に女子トイレがないことが多く、女子生徒たちは水分補給を我慢したり、トイレのために自宅に帰ったりすることを強いられています。これは、教育を受ける機会を奪うだけでなく、健康にも深刻な影響を与える問題です。
現在、世界では34億人が安全なトイレを利用できない環境で生活しており、不衛生な水やトイレが原因で毎日1,000人以上の幼い命が失われています。この深刻な状況に対し、水まわり製品や住宅建材メーカーであるLIXIL(リクシル)は、「寄付・援助」ではなく「ビジネス」の力で向き合っています。
SATO事業:持続可能な衛生市場の構築
リクシルが展開するソーシャルビジネス「SATO(サト)」は、途上国・新興国に画期的なトイレシステムを提供し、持続可能な衛生市場の構築を目指しています。SATO事業を率いるマッカスカーさんと坂田さんに、その最前線を聞きました。
なぜビジネスなのか?
「途上国支援」と聞くと、無償の物資提供や寄付をイメージする人が多いかもしれません。しかし、リクシルがあえてビジネスとして展開することを選んだのには、明確な理由があります。
「単発のプロジェクトや寄付では、資金や資源が尽きた瞬間に支援が止まってしまいます。私たちが目指すのは、市場に製品が流通し続けることで地域が自走できる仕組みをつくり、インパクトを生み出し続けることです」(マッカスカーさん)
Make・Sell・Useのサイクル
SATO事業の核となるのは、「Make・Sell・Use(作る・売る・使う)」のサイクルを回し続けるモデルです。モノづくりのノウハウを持つ現地メーカーと提携してSATOトイレを製造・販売し、設置は現地の職人や配管工が担います。
「これらすべてを地域内で完結させることで、雇用と収入を生み出し、経済が自律的に回る仕組みづくりを目指しています」(坂田さん)
地域社会への貢献
SATOトイレはプラスチック製で軽量かつ耐久性が高く、バイクに積んで農村まで運び、そのまま設置できます。また、若年層や女性が活躍できる仕事でもあり、ユニセフやNGOと協働して無料の研修プログラムを実施しています。
「プログラムにはこれまで2万4千人以上が参加し、ケニアでは研修を受けた女性職人が仲間のトレーニングをリードするなど、次の道も開かれています」(マッカスカーさん)
リクシルが提供するのは、単なるトイレではなく、地域社会の自立を促すビジネスモデル。5ドルのトイレが、世界中の人々の尊厳と未来を変えようとしています。