中西夏之展:没後10年、静謐な思索の世界に浸る-「緩やかにみつめるためにいつまでも佇む、装置」レポート
戦後の日本美術を代表する作家、中西夏之さんの没後10年を記念した回顧展「中西夏之緩やかにみつめるためにいつまでも佇む、装置」が、大阪・国立国際美術館で6月14日まで開催中です。関西公立館では初の本格的な展示で、その後の山梨県立美術館、セゾン現代美術館、茨城県近代美術館への巡回も決定しています。
「絵画とは何か」を問い続けた作家の軌跡
1935年東京生まれの中西夏之さんは、東京藝術大学を卒業後、画家としての活動を開始。1960年代には「反芸術」運動に呼応し、高松次郎さん、赤瀬川原平さんらと共に「ハイレッド・センター」を結成し、前衛的なパフォーマンスで注目を集めました。また、舞踏家土方巽さんとの協働では舞台美術を手がけ、身体と空間の関係性を探求するなど、多岐にわたる表現活動を行いました。
その後、絵画制作に再び本格的に取り組み、具象でも抽象でもない、独創的な絵画を生み出しました。本展では、半世紀以上にわたる制作の軌跡を64点の作品と資料を通して辿り、その根底にある絵画理念と実践を紹介しています。
展示の見どころ:時代を超えて響くメッセージ
内覧会で担当学芸員の福元崇志さんは、中西さんの作品が私たちに投げかける問いを3つに整理しました。「人はなぜ絵画を手がけ、また眺めるのか」「絵画は『どこ』に現れるのか」「絵画は『どのように』現れるのか」。これらの問いを軸に、展覧会は4つの章で構成されています。
第1章:生体と物質の錬金術-制作の原点に迫る
第1章「生体と物質の錬金術」では、初期の作品から「反芸術」運動、土方巽さんとの出会いまで、制作活動の始まりを振り返ります。藝大時代の作品《天の岩戸》(1955)や、「韻」シリーズ、パフォーマンス作品《コンパクト・オブジェ》(1962)、日用品を使った《洗濯バサミは攪拌行動を主張する》(1963/93)などが展示されています。当時の活動記録写真や資料も合わせて紹介され、中西さんの思想の萌芽を辿ることができます。
60年代の活動と晩年の作品を結ぶ視線
会場では、第1章の展示室入口から最終章の晩年の作品までが見通せるように工夫されています。福元学芸員は、この設えについて「60年代の反芸術と後年の作品とのギャップが研究の大きなトピック。最初期と晩年に何かしら通底する構造があるはず」と語っています。時代を超えて繋がる中西さんの思考に触れることができるでしょう。
この展覧会は、現代美術に興味がある方、中西夏之さんの作品を深く知りたい方にとって、必見の機会です。ぜひ、大阪・国立国際美術館へ足を運んでみてください。