熊本地震10年:TSMC進出で加速する半導体産業、工場停止の教訓から最新の地震対策へ
2016年4月の熊本地震から10年。熊本県には、世界最大の半導体受託製造企業であるTSMCが進出し、九州地域における半導体関連企業の集積が急速に進んでいます。しかし、あの時の苦い経験から、大手メーカー各社は最新の地震対策に力を入れています。
地震対策の進化:三菱電機の新工場に導入された最先端技術
3月末に完成したばかりの三菱電機のパワー半導体工場(菊池市)では、地下に100個以上の免震装置が設置されています。これらの装置は、地震の揺れを建物に伝わりにくくし、最大70センチもの揺れを吸収できるのです。
免震装置は、微振動が発生しやすいという課題があり、半導体工場にはこれまであまり採用されてきませんでした。しかし、三菱電機の新工場では、複数の装置を組み合わせ、緊急時のみ作動する最新構造を採用することで、微振動を抑制することに成功しました。
この背景には、熊本地震での苦い経験があります。2016年の本震で最大震度6強を観測した合志市の半導体工場は、設備の倒壊などにより5か月間も停止してしまいました。三菱電機の竹島天範課長は「想定以上だった」と振り返り、新工場については「最小限の揺れに抑えられる」と自信を語ります。
大手半導体メーカーも続々導入:耐震・免震対策の強化
半導体製造装置大手である東京エレクトロンも、合志市で今年度から本格稼働する開発棟に免震構造を取り入れています。ソニーグループも、同市で建設中の画像センサーの新工場や長崎県諫早市の工場の新棟で免震を採用するなど、大手メーカーは耐震・免震対策を強化しています。
TSMCの熊本第1工場では、耐震構造に加え、衝撃を吸収するダンパーなどが採用されています。また、ゼネコン大手の大成建設は、既存の建物向けに半導体製造装置などを載せて使う免震機能を備えた台車型の機材「TASユニット」を開発し、提供しています。
中小企業のBCP策定は課題:災害への備えが急務
大手メーカーが最新の地震対策を進める一方で、異業種を含む中小企業を中心に、災害に備えた事業継続計画(BCP)の策定はまだ十分に進んでいません。熊本地震の教訓を活かし、半導体産業全体で災害への備えを強化していくことが重要です。