道尾秀介『I』、読めば読むほど深まる迷宮…読書体験を揺さぶる新境地
人気作家道尾秀介さんの最新作『I』が話題を呼んでいます。怪談作家・川奈まり子さんも絶賛する本作は、単なるミステリー小説の枠を超え、読書という体験そのものを揺さぶる作品として注目を集めています。
ギミックだけじゃない、骨太な人間ドラマ
「あなたの選択で、結末が変わる!!」というキャッチコピーで話題の本作ですが、読み進めるうちにギミックに頼ったストーリーではないことがわかります。無戸籍児や若年層の自殺といった現代社会の問題を背景に、主人公たちの運命を深く掘り下げた人間ドラマが展開されます。
雨の匂い、ガラス細工…隠された神話性
本書は「ペトリコール」と「ゲオスミン」という二つの章で構成されており、雨の匂いやガラス細工、海、洞窟といった小道具や背景が、単なる装飾ではないことに気づかされます。ギリシャ神話を彷彿とさせる隠された神話性が、物語に深みを与えています。
斜め読み厳禁!順番に読むことで見えてくる真実
川奈まり子さんも「斜め読みすることだけは避けていただきたい」と語るように、本作は人称や視点の移動を巧みに利用した叙述トリックが仕掛けられています。読む順番によって結末が変化する可能性も…?一気に読み進めたくなる、ゲーム性の高い作品です。
鮮烈な風景描写と花言葉に隠された意味
道尾秀介作品の特徴である鮮烈な風景描写も本作の見どころの一つ。特に、水たまりに浮かぶキンモクセイの花筏の場面は、読者の心に深く刻まれるでしょう。キンモクセイの花言葉には「幽世」という死後の世界を表す意味があり、物語のテーマと深く結びついています。
読書体験を追求するなら『I』を
単に物語を読むだけでなく、読書体験そのものを味わいたいという方におすすめの一冊です。前作『N』もギミック満載ですが、読後感が大きく異なるため、両作品を読み比べるのも面白いでしょう。知の冒険を求めるあなたに、ぜひ手に取っていただきたい作品です。