天沢時生の『キックス』大森望が熱評!滋賀発、スニーカーとヒップホップが織りなすヤンキー青春小説
話題の小説『キックス』。短編集『すべての原付の光』で鮮烈なデビューを飾った天沢時生による初の長編小説を、翻訳家・評論家の大森望さんが書評。人生は祭りだ!と熱く語っています。
滋賀から世界へ!成り上がりと偽物と本物
舞台は滋賀県近江八幡市。主人公の大学生・佐治薫は、カラオケ店で出会った天才シューズデザイナーの深海温哉と友情を育みます。温哉はスニーカーデザインのコンペで優勝し、その才能で世界を席巻しますが、突如自殺してしまいます。
温哉の死をきっかけに、薫は温哉の故郷を訪れ、そこでバイカーギャングチーム『霊車会』と出会います。彼らを統べる『キング』は、なんと温哉の双子の弟・深海行哉。凄腕のキックス贋作師として知られていました。
贋作を真作に変える!破滅と祭りの熱狂
「思い出もノスタルジーも要らねえ。置き去りにしろ」とキングに突き動かされた薫は、行哉と組んで贋作商売に乗り出します。「贋作を真作に変える。愛をとりもどすのだ」と宣言し、破滅に向かって突き進む二人の姿は、まさに令和の『明日に向って撃て!』。
作中では、フェリーニの映画『8½』の台詞「人生は祭りだ。共に生きよう」が引用され、スニーカー、ヒップホップ、ヤンキー文化が入り混じる独特の世界観が展開されます。偽物と本物というテーマを、エモーショナルなリリックと破天荒なストーリーで描き出した、天沢時生の新境地と言えるでしょう。
大森望さんは、この小説を「祭りの熱狂に向かって突き進む」と評し、その熱いエネルギーを伝えています。スニーカー好き、ヒップホップ好きはもちろん、青春小説が好きな方にもおすすめの一冊です。