輝き続けた坂本花織選手、トリプルアクセルを諦め頂点へ 25歳、世界選手権4連覇で有終の美
日本女子フィギュア界を長らく牽引してきた坂本花織選手(25歳)が、3月24日~29日にチェコ・プラハで行われた世界選手権で現役引退を発表しました。ショートプログラム、フリーともにノーミスで演技をまとめ、日本人初となる4度目の世界選手権優勝という偉業を成し遂げ、華々しいフィギュアスケート人生に幕を閉じました。
苦悩の過去と決断
坂本選手がスケートを始めたのは4歳の時。次々とジャンプを習得し、中学生になると国際大会にも出場するようになりましたが、順風満帆な道のりではありませんでした。当時の同世代には、樋口新葉選手や本田真凜選手、紀平梨花選手といったライバルたちがおり、常に結果を求められるプレッシャーと葛藤していたと言います。
また、フィギュアスケートは体重の変化がわずかでもパフォーマンスに影響を与える繊細な競技です。厳しい食事制限も彼女を苦しめ、「お肉が食べたい」とこぼすこともあったそうです。それでも、地道な努力を続け、高校1年生の時に全日本ジュニアで初優勝、世界ジュニアでも3位入賞を果たしました。
「坂本花織のスケート」を完成させる選択
シニアに転向後、平昌五輪出場を掴み6位入賞を果たした坂本選手は、世界の壁を痛感します。トリプルアクセルや4回転といった大技がないと戦えないという危機感を抱き、オフシーズンを中心に大技の習得に励みました。しかし、練習を重ねても成功率は上がらず、苦悩の日々を送りました。
北京五輪目前の2021年秋、坂本選手はある決断を下します。それは、大技の習得を諦め、一つひとつの技の完成度を極限まで高めるという戦略への転換でした。この決断は、「トリプルアクセルを諦める」という挫折ではなく、「坂本花織のスケート」を確立する瞬間でした。
結果で証明した実力
この作戦は功を奏し、北京五輪では見事銅メダルを獲得。直後の世界選手権でも初優勝を果たし、日本のエースとしての地位を確立しました。「トリプルアクセルを跳ばなければ勝てない」という批判もありましたが、坂本選手は全日本選手権で5連覇、世界選手権で3連覇を達成し、結果でその批判を打ち破りました。
飾らない人柄と周囲からの信頼
氷上では絶対女王ですが、スケート靴を脱げば明るくサービス精神旺盛な生粋の関西人です。幼い頃から懇意にしている写真館のオーナーは、成人式の際に振袖姿で来店した坂本選手について、「道行く人に気づかれて即席の撮影会が始まってしまったが、快く応じていました」と語ります。また、毎年直筆メッセージ付きのポストカードを送ってくるなど、律儀な一面も持ち合わせています。
笑顔と涙に満ちた21年間。坂本花織選手の輝かしいフィギュアスケート人生に、惜しみない拍手を送りましょう。