ナフサ不足で透析治療に暗雲?医療現場の“温度差”と迫る経済的逼迫
中東情勢の悪化によるナフサ供給不足が、命を預かる人工透析治療に影響を及ぼす可能性が浮上しています。政府は供給体制の確保を表明する一方、実際の医療現場では「現時点で具体的な影響はない」との声も。しかし、医療機器の値上げによる医療機関の経営逼迫が、今後の透析治療の継続に影を落とすかもしれません。
ナフサ不足とは?なぜ透析治療に関わるのか
ホルムズ海峡の封鎖により、プラスチックの原料となるナフサの供給が滞っています。人工透析では、透析回路や廃液容器など、ナフサ由来のプラスチック製品が不可欠です。SNSでは「#透析が止まる日」というハッシュタグで、治療停止への不安の声が上がっています。
全国の透析患者は約34万人。週数回の治療を受けないと命に関わるため、安定的な医療材料の供給は喫緊の課題です。高市早苗首相は、国内需要の4カ月分を確保していると説明していますが、現場の状況は複雑です。
医療現場の“温度差”とは?
日本透析医会の山川智之会長は、取材に対し「現時点では透析医療の現場に具体的なナフサ不足の影響は出ていない」と語ります。医療材料は使い捨てが基本であるため、当面は供給に支障はないとのことです。
しかし、山川会長は「マスコミの報道と現実の医療現場にはやや温度差がある」と指摘。患者からの問い合わせは増えているものの、透析治療だけが過度に騒がれている状況に懸念を示しています。
最も懸念されるのは“医療費の高騰”
ナフサを原料とする製品の価格高騰は避けられません。東洋紡や積水化成品工業などの化学メーカーは、すでに値上げを発表しています。山川会長が最も懸念しているのは、この医療機器の値上げによる医療機関への経済的な負担です。
診療報酬は国が定める公定価格のため、病院側が自由に値上げすることはできません。そのため、医療材料の値上げ分は病院がそのまま負担することになり、経営を圧迫します。インフレの影響も重なり、赤字を抱える病院が増加しています。
深刻化する医療機関の経営状況
厚生労働省の調査によると、2024年度の全国の病院のうち67.2%が赤字です。透析医療は患者数が減少傾向にある一方、物価上昇により経費は増加。施設を閉鎖せざるを得ない状況も出てきています。
山川会長は「患者さんが医療を受けられる場所がなくなってしまうことが、最も懸念される」と訴え、政府に対して何らかの対応を求めました。今回の医療材料価格高騰に対し、医療機関の経営を支援する対策が急務となっています。