平安京の常識を覆す!鬼と人が共生する「令和的」なファンタジー小説『朱天の都』が面白い
既視感のある平安時代設定を「鬼との共生」でぶっ潰す!
煌びやかな平安貴族の権力争いと、路地裏に転がる貧困。そんな定番の平安時代ドラマに飽き飽きしていませんか?今回ご紹介する日本ファンタジーノベル大賞2026受賞作『朱天の都』(新潮社)は、そんな読み手の既視感を鮮やかに裏切る意欲作です。著者の加賀谷きよいは、なんと「鬼と人が共生している」という驚きの設定を物語の軸に据えました。酒乱のヒロイン・尚侍や、美しき鬼の首魁・朱天など、個性的なキャラクターたちが織りなす物語は、読み始めたら最後、ページをめくる手が止まりません。
「ウイルスとの共生」を経験した現代人だからこそ刺さるリアル
なぜこの物語が、今を生きる私たちの心に強く響くのでしょうか。それは、物語に登場する人々の「鬼への向き合い方」が、私たちが経験した新型感染症との生活にあまりに似ているからです。「鬼は恐ろしいが、刺激しなければ大丈夫」「日々を生きるのに忙しくて、いちいち鬼にかまっていられない」。そんな現実的な諦めと受容が、物語の中では日常として描かれます。鬼の王国でさえ、人間と同じように欲を生きる指標を持ち、目に見えぬものに憧れるという姿は、まさに私たちの社会の「写し鏡」なのです。
「鬼になること」は絶望ではなく、救済なのか?
物語の核となるのは、鬼の首魁・朱天の過去です。人間の子として生まれ、飢えと差別に苦しんだ彼女が、なぜ鬼となったのか。本作では、恨みや執心だけではなく、「生きたい」という強い願いこそが、人を鬼へと変える力であると描かれています。作家の澤田瞳子は、この物語を「異質と見えるものをどう理解し、受け入れるかという問い」と評しています。鬼と人が混ざり合い、新たな都を築こうとする彼らの姿は、「分断」が叫ばれる現代を生きる私たちに、寛容さとは何かを深く考えさせるきっかけになるはずです。
京都の「広い道路」の謎が解ける?ファンタジーが日常を変える体験
本作のもうひとつの魅力は、現実の風景に物語を重ね合わせる楽しみがあること。例えば、現代の京都には道幅の広い幹線道路が多く存在しますが、物語を読み終えた後には「あれ?ひょっとして鬼が通りやすいように作られたのでは?」なんて想像が膨らんでしまうはずです。逸話を下敷きにしながら、私たちの知る過去と未来を書き換えてしまうダイナミックな世界観。ぜひ、