有人月周回「アルテミス2」が告げる新時代 月面は「探査」から「開発」対象へ
NASAが4人の宇宙飛行士を乗せて行う「アルテミス2」ミッションは、単なる宇宙開発の節目ではありません。宇宙旅行が身近になりつつある今、このミッションが示すのは、月を「探査」する時代から「開発」する時代への転換です。
宇宙開発の新たな局面
これまで宇宙に行くことは特別なことでしたが、ISSへの滞在者数は300人に近く、BlueOriginなどの企業による宇宙観光も話題になっています。しかし、「アルテミス2」はこれらの商業的な飛行とは異なり、人類の宇宙探査の歴史に新たな一歩を刻むミッションです。
月までの往復飛行は、ISSとは比較にならないほど困難です。月はISSの約1000倍も遠く、地球の重力圏を振り切る必要があります。月への旅を経験した人はわずか24人。しかも最後は1972年です。今回の「アルテミス2」では、宇宙船「オリオン」が搭乗者を人類未踏の深さまで連れて行き、月の裏側を大きく回り込む予定です。
「宇宙利用」の時代の幕開け
「アルテミス2」は、1968年12月のアポロ8号のように、将来の着陸に向けた準備飛行です。実際に月面着陸するのは、2028年初頭を予定する「アルテミスIV」になる見込みです。NASAが目指すのは、月に「持続的な人類の拠点」を築くことです。
アポロ計画が地球へ持ち帰ったのは月の石や砂といった“記念品”でしたが、今後は月が持つ資源の本格的な利用が期待されています。鉱物の採掘、水氷の活用、燃料製造など、様々な可能性が検討されています。SpaceXのイーロン・マスク氏やBlueOriginsのジェフ・ベゾス氏といった企業も、この流れに深く関わっています。
イーロン・マスクの壮大な構想
中国も2030年までに自国の飛行士を月へ送る計画を掲げており、新たな“月争奪戦”が始まるのはもうすぐです。そして、その中心にいるのがイーロン・マスク氏です。彼は火星への移住を目指すだけでなく、月面都市の建設にも関心を寄せています。
マスク氏は、月面に「科学研究と製造活動のための恒久拠点」を築き、月の資源を活用して衛星を製造し、深宇宙へ展開する構想を語っています。「月に工場を造る」という発想は、まさに革命的と言えるでしょう。また、宇宙にAI向けデータセンターを置くというアイデアも現実味を帯びてきています。
「人類共通の財産」としての月
もちろん、これらの壮大な構想は、技術的な課題や経済的な制約を乗り越える必要があります。しかし、アルテミス計画に目を向け、宇宙船の飛行を見守り、クルーの無事な帰還を願うことは、私たちに新たな希望を与えてくれるはずです。
1979年に国連で採択された月協定には、「月およびその天然資源は、人類共通の財産である」という理念が掲げられています。この理念を胸に、私たちは月の開発と利用について、真剣に議論していく必要があります。