児童の「なぜ?」を大切に 学力差あるクラスで教師が実践する“新しい学び方”
「この授業、本当に意味があるのかな…?」
学校の授業で、ふとそう思った経験はありませんか?児童生徒の学力差がくっきりと現れる現代の教室で、教師たちは主体性や対話を通して深い学びを実現しようと、新しい試みに取り組んでいます。
「答え」を教えず、考える力を育む
国語の授業で物語を読む時、先生はすぐに「この物語のテーマは〇〇です」と答えを教えてくれることが多いかもしれません。しかし、福岡県と佐賀県で実践されている一部の教師たちは、あえて答えをすぐに明かしません。
「なぜ、この物語を読むのか?」
そんな問いかけを投げかけ、児童生徒自身が考え、議論する過程を重視することで、主体的な学びを促しているのです。
福岡の小学校での授業風景
福岡市南区の市立西高宮小学校1年生の教室。担任の森大樹先生(35歳)の授業は、一風変わっていました。児童たちは教室だけでなく、廊下や教室後方のマットの上など、好きな場所を選んで学習を進めていたのです。
授業で扱っていたのは、愛犬エルフの死を通して主人公の成長を描いた物語「ずうっと、ずっと、大すきだよ」。前回の授業で物語を読み終え、森先生は児童たちに「気になったこと」を尋ねました。
すると、児童たちからは「なぜ、犬は太ったのか」「なぜ、太ったら死ぬのか」といった、物語の細部に踏み込んだ疑問が次々と出てきました。
児童の疑問を尊重し、思考を深める
愛するエルフを失った主人公の悲しみに共感したり、心情の変化を読み解いたりすることも大切ですが、森先生はそこで誘導しません。各自が気になったテーマを尊重し、児童たちが自由に議論する様子を見守ります。
ある4人グループでは、「好きって言わなかったから、エルフが年をとっていった」「それはないやろ」「なぜ太ったら死ぬのか」「本当に食べ過ぎで死ぬのか」といった活発な意見交換が繰り広げられていました。
ある児童が「太ったからじゃなく、別の理由で死んだんじゃないかな」と発言すると、森先生は「そう思ったのはなぜ?考えてみよう」と問いかけ、児童たちの思考を深めるように促しました。
授業の「めあて」は、先生が決めるものではない
多くの授業では、先生が冒頭で「学習のめあて」を提示しますが、森先生は児童たちと一緒に考えることから始めます。
「『今日は何をするんですか』と先生に尋ねるのではなく、自分がやりたいことを考え、準備することを大切にしている」
学力に差があるクラスでも、児童一人ひとりの「なぜ?」を大切にすることで、主体性と対話を通して深い学びを実現しようとする、森先生の取り組みは、今後の教育現場に新たな風を吹き込むかもしれません。