商店街のぬくもりに癒やされる。武塙麻衣子さんの初小説『一角通り商店街のこと』が心に響く理由
日記のZINEやエッセイで多くのファンを魅了してきた武塙麻衣子さんが、ついに待望の初小説『一角通り商店街のこと』(小学館)を刊行しました。本作は、慣れない土地で一人暮らしを始めた男子大学生・雄士が、近所の商店街を通じて人々と交流し、少しずつ世界を広げていく心温まる連作短編です。今回は、著者の武塙さんに、執筆のきっかけや商店街への思いをインタビューしました。
「自分ではない誰か」を書く。大学生の視点で描く商店街の魅力
これまで『酒場の君』や『西高東低マンション』など、自身の視点に近い作品で注目を集めてきた武塙さん。しかし今回は、あえて「自分から遠い存在」である男子大学生を主人公に選びました。「商店街の外から来た人が、少しずつ街を知っていく物語にしたかった」と語る通り、本作には読者がまるでその街に住んでいるかのような没入感があります。物語の舞台となる商店街のモデルには、武塙さんが足繁く通う横浜橋通商店街などの空気感が投影されており、メンチカツやタマゴサンドといったグルメ描写も、読んでいるだけでお腹が空いてくるようなリアリティにあふれています。
用がなくても立ち寄りたくなる。「街と人の関係性」を丁寧に描く
コロナ禍でのひとり飲み歩きをきっかけに、地元の商店街の魅力に改めて気づいたという武塙さん。本作には、近所の魚屋から喫茶店まで、個性豊かなお店が次々と登場します。「あそこに寄って帰ろう」と思えるような、店主とお客さんの何気ない交流こそが商店街の醍醐味だと話します。一人暮らしを始めたばかりで孤独を感じやすい雄士が、商店街の人々との出会いを通じて、日常を愛おしく感じるようになる様子は、今の時代を生きる私たちにそっと寄り添ってくれます。忙しい毎日に疲れたとき、ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。
『一角通り商店街のこと』(小学館)の詳細は、