「戦争は絶対やってはいけない」98歳・最高齢遺族が語る兄への思いと平和への願い
「おやじの次に怖い、でも優しい兄」との最後の日々
8月15日、全国戦没者追悼式に参列した高橋和彦さん(98)は、今回の参列者の中で最高齢の遺族です。川崎市からつえを手に会場を訪れた高橋さんの胸には、フィリピンで戦死した兄・冨彦さんへの変わらぬ思いがありました。11歳年上の冨彦さんは、早稲田大学を卒業したエリートでありながら、弟と遊んでくれる優しい一面を持つ、高橋さんにとって憧れの存在でした。1944年の年末、駅前で交わした「よう」という言葉が、二人にとっての最後の会話となりました。その後、兄はルソン島で27歳という若さで命を落としました。
空っぽの骨箱と、今も続く「戦後」の重み
終戦後、兄の戦死を知らされた高橋さんが上野の寛永寺へ向かった際、受け取った骨箱はあまりに軽く、中身を確認する勇気さえ出なかったといいます。一人息子を亡くした夫婦の涙、そしてラジオから流れた玉音放送。「敗戦だとつくづく感じた」という当時の17歳の少年の記憶は、80年近く経った今も色あせていません。高橋さんは戦後、遺族会を結成し、兄の足跡を辿ってフィリピンを2度訪れました。昨年には、国の遺骨収集事業に望みを託して自身のDNA型を登録するなど、兄を探し、想い続ける人生を歩んできました。
「平和ほど尊いものはない」次世代へ託すメッセージ
「戦争は望まなくても巻き込まれる」。そう語る高橋さんが、今の若者に最も伝えたいのは「310万人の死を忘れないでほしい」という強い願いです。体調を崩しながらも会場へ足を運んだのは、戦禍の記憶が薄れゆく現代に対し、平和の尊さを身をもって示したいという決意があったからです。「戦争は絶対やってはいけない。世界が平和になるよう、日本人らしく英知を養い生きてほしい」。高橋さんが紡ぐ言葉は、混迷する現代を生きる私たちに、改めて平和の重みと、それを守り続ける責任を問いかけています。