台湾発話題の小説「四維街一号に暮らす五人」日本出版記念!楊双子×角田光代トークイベントレポート
台湾で話題を呼んでいる小説『四維街一号に暮らす五人』の日本版刊行を記念して、8月23日に東京・虎ノ門の台湾文化センターでトークイベントが開催されました。著者の楊双子さんと作家の角田光代さんという、初顔合わせのお二人が、歴史、ジェンダー、そして食をテーマに熱いトークを繰り広げました。
台湾の多様な民族とアイデンティティ
『四維街一号に暮らす五人』は、日本統治時代に建てられたレトロな日本建築のシェアハウスを舞台に、異なるエスニックグループに属する台湾人女性たちの生活を描いています。角田さんは、「台湾には九州くらいの大きさの中に、様々な民族が暮らしていることに改めて驚きました」と語りました。
楊さんは、「台湾でエスニックグループや文化の多様性が重視されるようになったのは、わりと最近」と説明します。過去には国民党政府によって北京語由来の言葉が強制され、それぞれの民族のアイデンティティが曖昧になる時期もありましたが、近年はそれぞれの言語を取り戻そうという動きも活発化しています。
「昔、アルバイト先には客家人が何人かいたのですが、その人たちは聞かれたくない話をする時に客家語を使っていました(笑)」と楊さんはユーモラスに語り、一方で、「アミ族やシラヤ族など台湾原住民が置かれた立場は微妙」と、民族間の社会的な格差についても触れました。
異なる属性の人物を描くことの難しさ
角田さんは、「自分がそこに属していない場合、その立場に立って書くことはとてもハードルが高い」と感じながらも、「この時代において、問題視していることは勇気をもって書かなくてはいけないのかな」と、作家としての責任について考えを深めています。
楊さんは、「漢人の私が原住民の人に代わって何かを書くことは、あまりしたくない」と自身の考えを述べました。台湾ではエスニックグループによって社会的な立場の強弱があるため、慎重な姿勢が求められます。自身の属性である「本省人」と、戦後に統治者となった「外省人」の関係性を例に、「本省人の私が外省人のことを書くことはできる、と考えています。でも、なかなか微妙なテーマではあると思います」と語りました。
食を通して描かれる人と人との関係性
この小説は、食を通して人と人との関係性を描いている点も特徴です。トークイベントでは、小説に登場する料理や、台湾の食文化についても語られました。「食べてみたいな、と思いながら読みました」と角田さんは感想を述べ、小説の魅力を一層引き立てました。
『四維街一号に暮らす五人』は、台湾の多様な文化や歴史、そしてそこに生きる人々の葛藤や希望を描いた、読み応えのある作品です。ぜひ手に取って、その世界観に浸ってみてください。