現代はなぜ「取り留めのない時代」に?異色の現代史が問いかける、失われた儀礼と新たな認識の可能性
現代社会が抱える閉塞感や漠然とした不安。その根源に迫る、イタリア人作家ロベルト・カラッソの著作『世俗的人間名もなき現代の戦争とテロリズム』が、2025年12月26日に祥伝社から発売されます。本書は、歴史、神話、文学を織り交ぜながら、現代がいかにして「取り留めのない時代」となったのかを、独自の視点から描き出します。
著者ロベルト・カラッソとは?
ロベルト・カラッソは、日本ではまだ馴染みの薄い作家ですが、その著作は28の言語に翻訳され、29カ国で出版されています。戦時下のフィレンツェに生まれ、出版社の創設にも携わったカラッソは、世阿弥や吉田兼好といった日本の古典文学にも精通していました。その深い洞察力と独特な文体は、他の作家にはない魅力を持っています。
なぜこの本に惹かれるのか?監訳者・出口治明氏の視点
本書の監訳者である出口治明氏は、カラッソの代表作『カドモスとハルモニアの結婚』との出会いをきっかけに、カラッソの広範な知識と西洋史観にとらわれない視点に感銘を受けました。出口氏は、歴史を「人類五〇〇〇年史」という視点から捉え、現代史を読み解く上で、カラッソの著作が独自の視点を与えてくれると感じています。
「ツーリスト」と「テロリスト」に見る現代社会
本書は、「ツーリスト」と「テロリスト」という二つの類型を中心に現代社会を描き出します。かつては流血供犠などを通じて社会の秩序を保っていた世界が、その儀礼を失った結果、戦争やテロリズムへとエネルギーがнаправленされたとカラッソは分析します。自爆テロを供犠の変容として捉える視点は、衝撃的でありながらも、歴史を深く理解するための鍵となるでしょう。
失われた儀礼と、新たな認識の可能性
現代社会では、空港での搭乗手続きのような予め決められた規則に従うことで、取り留めのなさを慰めているかのようです。しかし、カラッソは、儀礼を必要としない社会が、未知のものや不可視のものに対する知覚を窒息させている可能性も指摘します。インターネットの普及による情報過多も、その傾向を加速させていると言えるでしょう。
本書は、第二次世界大戦前夜からツインタワー崩壊までの時代を辿りながら、現代社会が廃墟のような状態にあることを示唆します。しかし、その一方で、新たな認識の可能性も開かれているとカラッソは語りかけます。予め植え付けられた情報に囚われず、「廃墟の訪問者」のように、新たな視点で世界を見つめ直すことの重要性を、本書は教えてくれるでしょう。