被爆者がいなくなる未来へ。広島平和記念資料館が挑む「デジタル継承」と「子ども向け展示」の最前線
「被爆者がいなくなる時代」を見据えて――AIやVRで記憶をつなぐ
8月6日、広島は「原爆の日」を迎えました。被爆から81年が経過し、被爆者の高齢化が進む今、「あの日」の記憶をどう次世代へ伝えていくのかが大きな課題となっています。広島平和記念資料館の石田芳文館長はインタビューで、AI(人工知能)やVR(仮想現実)といったデジタル技術を積極的に活用する方針を示しました。特に、被爆者の語りや思いをAIが再現する「被爆証言応答装置」は、対話形式で学べる新しい試みとして期待されています。「被爆者がいなくなる未来」を見据え、デジタル技術で記憶の風化を防ぐ挑戦が始まっています。
「見ない選択」も尊重。2028年度新設の子ども向けエリアに込めた想い
2028年度には、資料館の東館地下1階に子ども向けの新たな展示エリアが誕生します。ここで注目されているのが、凄惨な写真や資料を「見学するかどうか」を子ども自身が判断できる「選択展示」という手法です。石田館長は「惨状を伝えることは重要だが、トラウマによって平和学習そのものを拒絶してしまうことは避けたい」と語ります。自分と等身大の「当時の子どもたち」がどのような夢を持ち、何を奪われたのか。子どもたちの心に寄り添い、平和を自分事として考えられる空間作りを目指しています。
「被爆地を訪れる意義」とは。混雑対策と修学旅行生への呼びかけ
昨年度、同資料館には過去最多の約258万人が訪れました。しかし、一方で国内の修学旅行生数は横ばいにとどまっています。少子化の影響や、遠方からの費用面でのハードルに対し、資料館は積極的に広報活動を展開しています。石田館長は「インターネットでも情報は得られるが、実際に広島の地で、自分の目で見て感じることには大きな意義がある」と強調します。平和記念資料館の公式サイト(
一発の爆弾で奪われた「日常」を忘れない
最後に石田館長は、私たち世代にこう問いかけます。「原爆投下のあの日も、友達と遊び、家族と笑い合い、夢や希望があったはず。その全てを一瞬で奪い去ったのが核兵器です」。核兵器の非人道性を知り、人類と核が本当に共存できるのかを一人ひとりが考えてほしい。資料館は、過去の記録を見るだけの場所ではありません。私たちが未来を選択するための場所として、これからも進化し続けます。ぜひ一度、デジタルコンテンツや伝承者の活動を通じて、平和の重みを感じてみてください。