熊本地震10年:美しい棚田は荒れ果て、見えない格差…「創造的復興」は誰のためのものか?
2016年の熊本地震から10年。インフラ整備は進んだものの、復興の恩恵を実感できていない被災者が少なくないことが、西日本新聞の社説で明らかにされました。特に農村部では、耕作放棄地が増加し、生活再建の遅れや経済格差が深刻化しています。
失われた棚田の風景
熊本県西原村の新田地区を訪れると、かつて夕日に映えていた美しい棚田の面影はもはやありません。震災と豪雨で用水路が破壊され、約5ヘクタールの棚田が耕作放棄地となってしまったのです。戦前からコメを生産してきた地域が、荒廃していく様子は、被災者の無念を象徴しています。
「創造的復興」の現実
熊本県は「創造的復興」を掲げ、住宅再建や熊本城の復旧などを進めてきました。しかし、社説は、その実態が理想と乖離している点を指摘します。例えば、被災農家の営農再開が「完了」とされているものの、実際には耕作を諦めざるを得ない農家も多く、中山間地域での再生は道半ばです。
農家の声なき声
県立農業大学校の元副校長である荒木均さんは、「創造的復興は他人事のような気がする」と語ります。同様の実感を抱く農家は少なくなく、耕作放棄地は負の遺産となりかねません。荒木さんは、美しい景観を取り戻すために広葉樹の植林を提案していますが、農地法などの規制が課題となっています。
見えない格差と心の傷
復興の遅れは農村に限った話ではありません。各種アンケートによると、生活再建ができていないと感じている被災者は少なくなく、災害援護資金の返済が滞っているケースも少なくありません。ハード面での復興が進む一方で、生活再建できた人とそうでない人の格差が広がり、被災者の心の傷は癒えていないのが現状です。
誰もが実感できる復興へ
西日本新聞は、行政に対し、被災農家の声に耳を傾け、実情に即した施策を国に働きかけるよう求めています。また、ハード面での復興だけでなく、生活再建が遅れている被災者への支援を強化し、誰もが実感できる復興を実現する必要性を訴えています。